ミニチュアシュナウザーを始めとしたイヌの糖尿病の治療法

その特徴的な外貌から、ドイツ語で「ひげ」を意味する名前が付いているミニチュアシュナウザー。飼い主さまと良好なコミュニケーションをとることができれば、この上ないパートナーとなってくれる存在です。今回は、このミニチュアシュナウザーで多い疾患の一つである糖尿病に関して、治療法およびその際の注意すべきポイントについてお伝えしていきます。

主な治療法

糖尿病の主な治療法は、インスリン療法と食事療法です。インスリン療法にはいくつか薬剤の選択肢がありますが、イヌで推奨されているインスリンは、プロジンクまたはNPHインスリンとなります。糖尿病犬の血糖コントロール目標は100−250mg/dLであり、それを維持するために基本的にはいずれのインスリンも1日2回の皮下投与(前者は場合によっては1日1回でもコントロールすることも可能)を実施します。また、食事療法では食物繊維を強化し、一過性高血糖を抑制することができる糖尿病用の療法食を用いると良いでしょう。療法食を好まない場合は、普段食べている食事でも問題ありませんが、決まった量を決まった時間に食べるように指導することが欠かせません。

診療のポイント

イヌの糖尿病は8歳以上の中高齢でみられることがほとんどではありますが、実は年齢を問わず発生がみられる症状です。したがって、重要なのは糖尿病のシグナルメントである、多飲多尿、体重減少を見逃さないこと。また、未避妊メスの発情期にみられる黄体期糖尿病や、クッシング症候群が背景にある場合には、重篤なインスリン抵抗性を示すことが多く、いずれもインスリン療法を開始する前にこれらの対処が必要です。他にも、糖尿病の発見が遅れてしまいケトアシドーシスに陥ってしまった場合は、上記で説明した内容とは異なる緊急治療が必要となります。

まとめ

糖尿病の治療の「目標」は適切な血糖値を維持することにありますが、「目的」は高血糖が持続することで起こる白内障や腎症などの合併症の予防、および低血糖による発作の予防にあります。しかしながら、イヌの糖尿病では、かなりシビアに血糖コントロールをしても、最終的には白内障になってしまうケースがほとんどです。とはいえ、インスリンをむやみに増量すると致死的な低血糖を起こす危険性があります。起こりうるリスクと、できる治療の限界を飼い主さまにご理解いただくことも、良好な信頼関係を維持し、継続的に経過をみていくために必要なのかもしれません。

獣医師H

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