【日本獣医生命科学大学 左向教授】糖尿病とは??~イヌ編~

まずはじめに…糖尿病とは??

糖尿病(diabetes mellitus: DM)は、インスリンの作用不足によって血糖値(血中ブドウ糖[グルコース]値を血糖値と一般に使っている)が上昇することで引き起こされる代謝異常で、遺伝因子と環境因子(免疫、加齢、肥満、環境など)の影響を受けています。

 

インスリンは膵臓のランゲルハンス島B(β)細胞から分泌されるホルモンで、主な作用は血糖値上昇を抑制作用ですが、脂質、タンパク質などの代謝にも関係しています。

 

糖尿病の高血糖状態が長く続くと尿中にブドウ糖を大量に排泄すると共に、多尿(浸透圧利尿)、脱水、多飲を示し、長期化すると体重減少、重度となるとケトアシドーシス(食欲不振や嘔吐)や昏睡となる場合もあります。


1.イヌ糖尿病 発症時の年齢

イヌの糖尿病

イヌの糖尿病は、発見された時には既にインスリン分泌がほとんど認められず、
インスリン投与を行わないと生存できない、ヒトの病態分類でいうと「インスリン依存状態」です。

 

イヌの糖尿病は、1歳未満の若齢で発症する糖尿病と3歳以上で発症するものとがあります。

 

若齢で発症する糖尿病はヒトの1型糖尿病と同じ考えられます。

 

3歳以上で発症する糖尿病はクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)から進行したものと、非避妊雌の黄体期に発症したものとがあります。

避妊手術と糖尿病の関係

最近は避妊されているイヌたちが増えているので、黄体期発症の糖尿病の割合は減る傾向にあります。

 

黄体期発症糖尿病は黄体期のホルモンバランスが関与するという点ではヒトの妊娠糖尿病(GDM:gestational diabetes mellitus)と似たところがあります。

 

ヒトの妊娠糖尿病(GDM)とは、糖尿病が妊娠以前から存在している糖尿病合併妊娠(preexisting diabetes)、妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常で臨床的に糖尿病と診断されたもの(overt diabetes)は除外されます。

 

妊娠糖尿病診断の定義は、糖尿病に至らない軽い糖代謝異常ですが、胎児の過剰発育が起こるため周産期リスクが高いこと、母体の糖代謝異常はいったん改善しますが糖尿病発症リスクが高いものをいいます。

 

これらの点からイヌに認められる黄体期発症糖尿病は、妊娠糖尿病というより、overt diabetesに近いと考えられます。

 

黄体期発症糖尿病は発見されたら出来るだけ早期に避妊手術を実施することが勧められます。

 

早期に避妊手術を行うことで、インスリン投与量の軽減やインスリン治療からの離脱が可能な症例があります。

 

クッシング症候群のうち10頭に1頭ぐらいの割合で糖尿病を発症します。クッシング症候群のイヌでは血糖値等を十分監視しておく必要があります。
逆に非避妊雌の黄体期発症糖尿病以外はクッシング症候群の検査をした方が良いと考えられます。

2.イヌ糖尿病の性別による内訳

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