ハムスターの糖尿病:検査でみるべきポイント

ハムスターの糖尿病には、遺伝的にインスリンの分泌が欠乏するⅠ型糖尿病と、後天的にインスリンに対して抵抗性を獲得し、相対的にインスリンが欠乏するⅡ型糖尿病があります。Ⅰ型糖尿病は、チャイニーズハムスターやジャンガリアンハムスターなどで散見され、比較的若齢での発症が多いのが特徴です。それに対して、Ⅱ型糖尿病は運動不足や高脂肪食など誤った生活習慣を背景に、肥満個体で見られます。Ⅰ型およびⅡ型糖尿病のいずれにおいても、臨床上見られる症状は同じです。発見が遅れてしまうと、進行に伴って腎不全や感染症など、命に関わる大きな問題に発展しかねません。今回は、糖尿病の早期発見につながる特徴的な症状と、診断するための重要な指標となる尿試験紙での判断方法についてご紹介します。

特徴的な症状

まず、糖尿病で必ず見られる症状は多飲多尿です。ハムスターの正常な1日の飲水量は体重の約10%ですが、糖尿病のハムスターではその3倍以上の飲水量が確認されます。これに関連して、十分な水が確保されていないと脱水が見られることがあります。一般的に、ハムスターは吊り下げタイプまたは壁掛けタイプの給水ボトルを用いて水を与えられているため、飲水量を正確に計測するのが容易です。尿量を正確に計測するのはなかなか困難ではありますが、多尿になると床材が常に濡れている状態になります。これまでと比較して頻繁に床材を交換しなければならなくなったら、糖尿病を疑う要因のひとつだと言えるでしょう。

次に注意すべき症状は、食欲の変化です。糖尿病の初期では食欲が増進することが一般的ですが、進行に伴い感染症や腎不全などによって全身状態が悪化すると、食欲の低下が見られます。また、これに関連して体重の変化についても、初期段階では肥満個体が比較的多いですが、進行に伴い、体重の減少および削痩が見られるのです。

重症例では、合併症として白内障が見られることもありますが、老化に伴う白内障の可能性もあるため、総合的に判断する必要があります。

尿試験紙での判断方法

多飲多尿は、必ずしも糖尿病でのみ特徴的な症状ではなく、腎不全やプレドニゾロンなどステロイドの服用でも見られる症状です。そこで、前述した症状に加えて、尿試験紙による尿糖を確認することが重要となります。正常なハムスターの尿だと糖分が含まれることはありませんが、糖尿病の場合は尿糖陽性となります。糖代謝が正常に機能せず飢餓状態が続くと、尿中にケトン体が検出されることもあります。

本来であれば、高血糖を確認することが糖尿病を確定する上で必要ですが、ハムスターの採血は眼窩静脈叢あるいは心臓採血となってしまうため、臨床上、日常的に行うのは困難です。したがって、上記症状と尿糖をもって糖尿病と診断し、治療を開始します。治療や経過のモニタリングに関しても、同様の理由から血糖値ではなく、尿量や尿糖および体重などを指標として経過を見ていくことになります。

まとめ

ハムスターの糖尿病は、予後不良の病気です。イヌやネコのようにインスリン注射薬がないだけでなく、自宅で飼い主さまが日常的に皮下注射を行うのは手技的に困難だからです。仮にできたとしても、血糖値による正確なモニタリングはできません。このように課題の多い中、今できる獣医療の限界を飼い主さまにご理解いただいた上で獣医師として提供できることがあるとしたら、それは特徴的な症状と尿試験紙による検査結果から導かれる現状をお伝えし、飼い主さまと動物の心情に寄り添っていくことではないでしょうか。

獣医師B

インコをはじめとした鳥類の糖尿病の治療

【日本獣医生命科学大学 左向教授】糖尿病の分類