【いまさら聞けないシリーズ】見直されているウサギの毛球症。その正体とは?

ウサギを診療する獣医師にとって、その病名を知らない人はいないというくらい有名となった「毛球症」。しかしながら、その病名自体が見直され、現在の獣医学の教科書では記載が無くなっています。それにもかかわらず、Web上ではいまだに毛球症という言葉が一般的に使用されており、飼い主さまから質問される機会は多いのではないでしょうか。今回は毛球症という言葉が使われるに至った経緯と、いわゆる毛球症だった病気の正体についてお伝えしていきます。

どうして毛球症という病気ができてしまったのか?

毛球症とは、毛繕いで食べてしまった毛が胃の中で絡まって問題を起こす病気です。主な症状としては、食欲不振、活動性の低下、排便停止などと言われていました。実際にこのような症状を呈するウサギで試験的に胃を切開したところ、どの個体にも毛球があったことから、これを原因とされ毛球症という病名がついてしまったのです。しかしながら、実際には正常な個体の胃の中にも、同程度の毛球が存在していることが判明し、現在では胃の中の毛球は原因ではないことがわかっています。

いままで言われていた毛球症の正体は?

毛球症で言われていた症状を呈して来院されるケースは非常に多く、原因が間違っていただけで、実際に存在する病気であることは間違いありません。この症状の正体として、毛球症に変わって現在使われているのは、「鬱滞」や「食滞」という言葉です。病名というより症状名といったほうが適切かもしれません。ウサギの食滞では、不適切な食餌、痛みや環境の変化などによるストレスが原因とされ、消化管の機能障害が起こった結果、毛球症で言われていた症状がみられます。

まとめ

ウサギの毛球症という病気は、その病名が使用されていた当時から、遭遇する機会が多い病気でした。しかしながら、病態生理が分からない上に系統立った検査や診断が確立していなかったのです。その結果、現場の獣医師が飼い主さまに説明する上で非常に説得力を持たせる病名、「毛球症」がむやみに多用されてしまいました。毛球症と診断されたウサギは、全身麻酔で胃切開され、摘出する必要のない毛球を摘出されてきたのです。これからの時代は、かつて言われていた毛球症の正しい理解のために、一歩踏み込んだ検査や病態把握を行い、適切な治療を行える獣医師が求められるでしょう。

獣医師T

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