インフォームドコンセントのために知っておきたい急性腎不全の予後

急性腎不全と診断した場合、その治療に苦労することも多いため、予後が悪いと感じている獣医師もいるのではないでしょうか。致死率の高い病気を治療する際には、適切な診断・治療を行うのはもちろんですが、考えられる予後を飼い主さまにしっかり説明しておくことも大切になります。

今回は、2018年にまとめられた急性腎不全の予後に関する論文から、治療法の選択を含めた予後について考えてみましょう。

感染性の急性腎不全の予後は良い

今回ご紹介するのは、2018年にインターネット上に発表された、11の症例集積研究をまとめた論文です。この論文では、急性腎不全の治療や予後をまとめた11の研究、合計1,201頭のデータを統計解析しています。

急性腎不全全体の死亡率は、ネコ53.1%、イヌ45%となっており、約半数の動物が治療中に死亡(安楽死も含む)しています。しかし、その原因を感染性と非感染性に分けると予後は大きく異なります。イヌの致死率は、感染性が17.3%、非感染性が68%となっています。また、ネコの場合は感染性が30%、非感染性が53.3%です。このように、急性腎不全の原因が感染性か非感染性かで大きな差が出ているのです。

急性腎不全の感染性の原因としては、子宮蓄膿症やレプトスピラ、腎盂腎炎、非感染性の原因では腎毒性物質、原因不明、尿管閉塞が多くなっています。イヌの感染性による急性腎不全の予後が良い原因として、「子宮蓄膿症の救命率が高いこと」が理由だと指摘されています。

治療法による予後の差はなし

治療別の死亡率に関しては、透析による積極的な治療と、点滴や利尿などの保存療法では救命率に差がないという結果が出ています。これは、透析治療と保存療法を適応する患者の重症度が違う点がその一因となっている可能性もあるでしょう。また、透析による合併症の多さも、透析治療の成績が上がらない原因だと考えられています。

腹膜透析では、腹膜炎や腹腔からの液体漏出、カテーテルの閉塞など、カテーテルに関するトラブルが多いようです。それ以外に、低血圧や透析不均衡症候群などの透析に伴う合併症も多く、こういった合併症を減らすことで、透析治療の予後改善の可能性があるでしょう。

まとめ

急性腎不全は、原因によってその予後が大きく変わります。治療法の選択はもちろんのこと、その予後のインフォームドコンセントのためにも、その原因を確実に診断することが大切です。また、腹膜透析などの積極治療を行う場合には、救命率を高めるためにも、カテーテルの扱いに気を付けて全身状態をこまめにチェックするなど、合併症のリスクをできるだけ減らすことが重要になります。

獣医師F

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