安全な膀胱穿刺のために知っておきたい合併症のリスクと予防のポイント

血液検査をするために採血が必要なのと同様、尿検査では採尿が必要になります。
血液は、血管に針を刺してとらなければなりませんが、尿の採取にはいくつかの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあるのです。
今回は、無菌的に尿が採取できるものの、リスクも存在する「膀胱穿刺」の方法や注意点についてお話いたします。

■膀胱穿刺の方法

膀胱穿刺は、無菌的に尿を採取できる反面、イヌやネコの腹腔内に針を刺す必要があるため、自分がやりやすい、安全な方法を確立することが大切です。

膀胱穿刺の方法には大きく2つあり、膀胱を触診しながら針を刺す方法と、超音波ガイド下で穿刺する方法があります。

触診による膀胱穿刺は、肥満していない動物で、ある程度尿が溜まっているときに有効です。体位は立位・横臥位・仰臥位のどの体位でも可能です。

一方、超音波ガイド下での膀胱穿刺は仰臥位や横臥位で実施することが多くなります。肥満動物や尿貯留が少量の場合にも実施することができるというメリットがあります。

尿検査のための膀胱穿刺は通常22~25Gの注射針を使って行うことが多いです。尿路閉塞の一時的な減圧のための膀胱穿刺には、留置針と延長チューブを使って尿の抜去を行うこともあります。

■膀胱穿刺に多い合併症とその予防のポイント

膀胱穿刺でよく報告される合併症とその予防のポイントは以下の通りです。

1.膀胱破裂、裂傷、尿の腹腔内漏出

膀胱穿刺による合併症で最も気を付けなければならないのが、膀胱の損傷や尿の腹腔内漏出です。それらの合併症を防ぐためには、以下のようなポイントを守ることが大切になります。

・暴れる動物には鎮静を行う
・動物が動いたら無理せずいったん針を抜く
・尿の抜去のために時間がかかる場合には留置針を使用する
・1度針をさしたら角度を変えない
・18G芯など太い針を使わない
・膀胱穿刺中、及び針を抜くときには常に陰圧を保つ

2.出血

穿刺針により腹腔内の血管を損傷させてしまうと、腹腔内出血の原因となります。また、皮下を走る大きな動脈や静脈を損傷すると、皮下出血の原因ともなります。これらの合併症は、以下のような方法をとることで予防可能です。

・膀胱穿刺は腹壁の正中から行う
・膀胱をつかんで腹壁付近に持ってきてから穿刺する
・盲目的な穿刺を行わない
・尿が取れない場合には、1度針を抜き再度膀胱の位置を確認して穿刺する(むやみに深く刺さない)

3.血管迷走神経反射

気をつけて膀胱穿刺を行っていても、避けるのが難しい合併症が血管迷走神経反射です。膀胱穿刺後に血管迷走神経反射が起こると、徐脈や低血圧によって嘔吐や流涎、虚脱、失禁などが起こることがあります。基本的に血管迷走神経反射は一過性の反応になりますが、徐脈や低血圧がひどい場合には、アトロピンの投薬や静脈点滴が必要になることもあります。

血管迷走神経反射はあまり多い合併症ではありませんが、その症状は非常に強いものになりますので、この合併症のリスクを事前に飼い主様にお話ししておくことが大切です。また、ストレスや緊張が強い動物には、鎮静を行って膀胱穿刺を行うことで血管迷走神経反射を防ぐことができる可能性もあります。

■まとめ

膀胱穿刺は、尿を確実に無菌的に採取するためには非常に有効な手段です。ただし、腹腔内に針を刺す採尿法であり、危険な合併症のリスクもあります。そのため、膀胱穿刺の合併症によるトラブルを避けるためには、注意するポイントをしっかり確認するとともに、リスクについて事前に飼い主様にお話ししておくことも重要になるでしょう。そして、時には鎮静を行うことも、安全な膀胱穿刺の実施には必要なケースがあることも理解しておきましょう。

獣医師A

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