糖尿病の治療と言えばインスリンが主流です。インスリンには様々な種類がありますが、持続時間や単位数などは個体によって異なります。それまで安定していた状態でも急に血糖値のコントロールができなくなることがあります。インスリンがうまく反応しない時にはどのようなことを考えるべきでしょうか。
インスリンの問題
インスリンは混和の際に過度に振ってしまうと結晶を破壊し、吸収されやすい形に変化してしまい作用時間が短くなってしまいます。また、温度によっては失活してしまうことがあるので、飼い主さまのインスリンの取り扱い方を聞き取り、インスリン活性に問題がありそうな場合は新しいものに変更し再度血糖値のモニターを行いましょう。
希釈したインスリンを使用している場合も、一度希釈していないインスリンを使用してみましょう。インスリンの用量が多い場合はソモギー効果といって実際は低血糖になっているにも関わらず、高血糖の部分のみ評価してしまい余計に用量を増やしかねません。インスリンを減らし臨床徴候の改善がみられた場合はソモギー効果を疑う必要があります。
インスリン抵抗性の問題
糖尿病では様々な併発疾患があります。なかでもインスリン抵抗性を示す併発疾患が数多くあるため、よく問診することはもちろん、血液検査を始めとした尿検査、画像検査が必要です。多い疾患としては膵炎、膀胱炎、歯肉炎などの炎症性疾患です。さらにクッシング症候群、膵外分泌不全、甲状腺機能亢進症、下垂体腫瘍、先端巨大症などを考えていきます。
注射の打ち方の問題
うまく血糖値をコントロールできない一番の原因は飼い主さまによる皮下注射ができていないケースです。動物病院で毎日のように注射をしていると、注射すること自体がごく自然なことですが、多くの飼い主さまにとって注射は馴染みのない行為です。そのため、うまくインスリンが打てているかを判断するために、獣医師の目の前で注射を打ってもらい、手技に問題が無いかどうかを確認する必要があります。また、激しく振ると結晶が壊れてしまうのでやさしく混和するように指導します。
まとめ
インスリンが効かなくなるケースはとても多くなっています。飼い主さまが適切にインスリンを扱えていないこと、インスリン自体に問題があること、糖尿病罹患動物の体の問題など原因は様々です。インスリン抵抗性を考えて併発疾患を疑うことも大切ですが、まずは飼い主さまがインスリンおよび注射器をきちんと扱えているかをよく確認しその後にインスリン自体の問題を考えましょう。
獣医師K
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