セキセイインコの甲状腺機能低下症と治療法

高齢のイヌで比較的よく遭遇する内分泌疾患の一つである甲状腺機能低下症は、実はセキセイインコでも遭遇する機会の多い内分泌疾患の一つでもあります。セキセイインコにおける甲状腺機能低下症の原因は明確にはわかっていませんが、甲状腺ホルモンの低下に伴う様々な代謝低下による症状や、それに対する治療に関してイヌの場合と似ているところが非常に多い疾患です。普段の診療ではイヌやネコをメインに診療されている先生方にとっても比較的受け入れやすい病気の一つかもしれません。今回は、セキセイインコにおける甲状腺機能低下症の症状と治療法についてお伝えしていきます。

セキセイインコの甲状腺機能低下症の症状

甲状腺ホルモンは換羽のコントロールに関わっているので、機能低下が起こると「綿羽」と呼ばれる綿毛のような細くて白い羽が全身に増えてくるのが特徴の一つです。また、脂質代謝にも関わっていることから、高脂血症を引き起こし肥満や脂肪肝の原因にもなっています1)。慢性的な高脂血症は、脂肪肝を引き起こし、肝機能障害の原因となり、羽毛形成不全や嘴・爪の形成不全の他、全身の羽の黄色化が見られることが少なくありません2)

セキセイインコの甲状腺機能低下症の治療法

治療法としては、不足する甲状腺ホルモンを補うべく、レボチロキシンナトリウムの経口投与を行います。また、血液検査によって高脂血症がみられる場合は低脂肪食などの食餌内容の変更や、プラバスタチンなどの高脂血症改善薬を処方します。
それと関連して、脂肪肝による肝機能障害がみられる場合は、ウルソデオキシコール酸などの肝庇護剤などの併用も行います。その他にも、肥満がみられる場合は、適切な食餌指導と適度な運動によるダイエットを実施し、適切な体重を維持していくことが大切です。

まとめ

甲状腺機能低下症は、明らかな体調不良を訴えることや急変するようなこともないため、飼い主さまが抱く危機感はあまり高くなく、自己判断で治療をやめてしまう方も少なくありません。治療による肝機能や高脂血症の改善がみられたとしても、すぐに症状が改善されるわけではなく、次の換羽がある数ヶ月、場合によっては1年以上を要してようやくその効果を実感することになる可能性もあり、ドロップアウトの要因となってしまいます。適切な治療を継続的に行うためには、飼い主さまの治療に対するモチベーションの維持をいかに行っていくかという点も、大きな課題かもしれません。

獣医師U

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◆参考文献◆

  1. Hudelson KS, Hudelson PM:Endocrine Considerations. In Harrison GJ,Lightfoot TL:Clinical Avian Medicine VOLUME Ⅱ.Spix Publishing,Palm Beach,541-557,2006
  2. Hochleithner M, Hochleithner C:Evaluating and Treating the Liver. In Harrison GJ,Lightfoot TL:Clinical Avian Medicine VOLUME Ⅰ.Spix Publishing,Palm Beach,441-449,2006