糖尿病の治療といえば、インスリン療法・食事療法・経口血糖降下薬などが一般的です。
しかし、一口に糖尿病といっても、イヌとネコの糖尿病では原因や病態などが異なってきます。
ネコではインスリン療法と食事療法の併用が一般的で、経口血糖降下薬も選択肢に入りますが、イヌでは経口血糖降下薬が効くケースが少なくなっています。
そのため、イヌの糖尿病ではインスリンの選択が最も大切となってきます。また、イヌの大きさによって最適なインスリンも変わります。治療の目的や、インスリンの使用方法も含めて、イヌの糖尿病治療についてみていきましょう。
糖尿病治療の目標
血糖値の目標は、尿糖が出ないと考えられる100~250mg/dLとなります。この範囲を目標とすることで、白内障や低血糖などが起こりにくくなるでしょう。
血糖値をできるだけ正常に保つことができれば理想的といえますが、厳密にコントロールすることが糖尿病治療の目的ではありません。
糖尿病に罹患しているイヌの生活の質を良好に保つことが、最も大切になってきます。
インスリンの選択
イヌの糖尿病では、どのインスリンを選択するのかが極めて重要です。
第一選択は、中間型インスリン製剤であるNPHインスリンです。
しかし、小型犬の場合はインスリンの作用時間が短くなる傾向があるため、持続型インスリンであるインスリングラルギンを用いるケースもあります。
また、イヌの場合はクッシング症候群を併発することがあります。その場合はインスリン抵抗性を示すので、血糖値のコントロールが難しくなってきます。もし血糖コントロールが難しければ、同じ持効型インスリン製剤であるインスリンデテミルへの変更も考慮します。
インスリンの使用法
最初にインスリンを使用するときは、血糖値を正常値に下げるというよりも、まず体に慣れさせることを目標としていきます。
NPHを0.2~0.4U/kgで注射し、血糖曲線を作成します。
イヌのオーナーにインスリンの打ち方を指導し、目標の血糖値まで単位数を0.1U/kgずつ徐々に上げていきます。
まとめ
イヌの糖尿病は人間の1型糖尿病、ネコの糖尿病は人間の2型糖尿病と類似しているといわれています。そのため、イヌとネコでは治療法が異なり、イヌの場合はインスリンの選択が最も重要といえます。
また、治療開始時に早く血糖値を下げたくなりますが、最初のうちは、体に慣らすことを目的として、インスリンの量を徐々に増やしていくことが重要でしょう。
獣医師K
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