日本では、イヌに対して理学療法士と獣医師が協同した理学療法関連技術(PTT)の取り組みが行われています。しかし、イヌの理学療法に関する科学的レポートは少ないのが現状です。そこで、この記事では1900年~2022年までに日本国内の学術雑誌に掲載された理学療法に関する症例報告の最新の知見を収集し、その内容を整理した論文についてご紹介します。
ご紹介する論文について
論文「本邦における犬に対する理学療法」は、1900年~2022年までに日本国内の学術雑誌に掲載されたイヌの理学療法に関する症例報告を対象としたものです。医中誌Webを含む3つの電子データベースを使用して最新の知見を収集し、整理した内容となっています。
PTTが実施されている犬種と疾患について
この論文では、一定の基準を設けて、イヌに対する理学療法に関する症例をあたっています。すると、3643件ある文献のうち、10件が理学療法に関する症例にまつわる文献であることがわかりました。
10件の文献では、0~12歳のイヌを対象とした計28例が報告されています。犬種は、ダックスフンドとヨークシャーテリアについて各2例、そのほかには、異なる犬種についてそれぞれ報告されていました。また、疾患に関しては、椎間板ヘルニアが5例ともっとも多く、次いで、レッグペルテス病、前十字靭帯断裂が各2例との報告でした。
実施されているPTTの方法、実施期間について
実施されたPTTは、関節可動域訓練またはストレッチングが9例、歩行練習が8例、マッサージが6例です。また、物理療法を用いた報告は、ホットパックやアイスパックが各5例、低周波療法が3例、レーザー療法や超音波療法、極超短波療法が各1例で、複合的にPTTを利用した介入が実施されていました。また、PTTの平均的な介入期間は7.1カ月でした。
まとめ
この論文では、合計10件の症例報告が確認され、そのほとんどは整形外科または神経疾患のイヌに関する報告で、物理療法、徒手療法、運動療法を用いた事例について報告されていました。
やはり、日本では理学療法関連技術(PTT)の取り組みが行われているにも関わらず、イヌの理学療法に関する科学的レポートが少ない傾向にあります。日本における今後の動物理学療法の発展や報告が期待されています。
獣医師B
〈参考文献〉
田中 智美, 井川 達也, 石坂 正大, 本邦における犬に対する理学療法, 理学療法科学, 2023, 38 巻, 5 号, p. 381-384,