異なる炭水化物源が健常猫の糖代謝に与える影響

ネコは炭水化物の代謝が不得意な動物といわれており、標準体重で基礎疾患や持病がない場合、高蛋白低炭水化物食が推奨されています。今回は、「異なる炭水化物源が健常猫の糖代謝に与える影響について」という論文をご紹介しますので、ぜひ日々の診察の一助となれば幸いです。

炭水化物摂取における血糖値の変動

炭水化物は穀類、芋およびデンプン類などに多く含まれています。栄養学上は、糖質と食物繊維の総称として扱われ、食物繊維を炭水化物から除いたものが糖質です。炭水化物は血糖を大きく上昇させる要因となるため、特にヒトの糖尿病においては低炭水化物食が推奨されてきました。

しかし、昨今、総エネルギー摂取量の過剰や栄養バランスの悪い食事が問題視され、糖尿病の食事療法について見直されています。吸収の遅い炭水化物の使用について、同じ量の炭水化物を含む食品でも食物繊維が含まれることで炭水化物の吸収が緩やかになり、血糖値の上昇がおだやかになると報告されています。

ネコの肝臓は、糖を取り込む能力がイヌの1/3程度です。炭水化物の代謝が不得意であるため、標準体重で基礎疾患や持病がない場合には、高蛋白低炭水化物食が推奨されています。

炭水化物の違いが血糖変動に与える影響

炭水化物または糖質は、単糖から構成され、グルコース・マルトース・トレハロース・コーンデンプンなど、非常に多様な種類があります。

ネコにおいては、血糖値を緩やかに上昇させるような炭水化物の使用が好ましいとの報告もあります。しかし、炭水化物の種類の違いが血糖変動に与える影響を検討した報告はあまりありません。

「異なる炭水化物源が健常猫の糖代謝に与える影響について」の論文では、異なる炭水化物(グルコース、マルトース、トレハロース、コーンデンプン)を健常猫4頭に給与し、血中グルコース、インスリンおよび遊離脂肪酸 (NEFA)濃度に与える影響が検討されています。

ネコにはコーンデンプンが有用

この論文によると、炭水化物の種類の違いが、血糖変動に影響を与えることが明らかになっています。中でもコーンデンプンは、血糖上昇およびインスリン分泌が緩やかであり、血中NEFA濃度の上昇も認められませんでした。

まとめ

この論文の結果から、コーンデンプンは炭水化物代謝の苦手なネコにとっても有用な炭水化物源であると考えられるでしょう。ヒトの糖尿病の食事療法において、さまざまな研究が行われているように、糖尿病のネコにおいてもこういった研究が進み、より治療の幅が広がっていくことが考えられます。常に最新の論文に目を向け、治療の選択肢を増やしていきましょう。

獣医師G

【参考文献】
上田 香織, 浅見 真帆, 山田 詩織, 佐伯 香織, 小田 民美, 丸山 夏輝, 生野 佐織, 秋山 蘭, 早川 典之, 森 昭博, 左向 敏紀, 異なる炭水化物源が健常猫の糖代謝に与える影響について, ペット栄養学会誌, 2017, 20 巻, 2 号, p. 122-127