動物の腎臓病を早期発見する「SDMA」の活用事例

「SDMA」は、IDEXX Laboratoriesが開発したイヌとネコ専用の腎臓バイオマーカーです。慢性腎臓病(CKD)ガイドラインを作成している国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)は、そのガイドラインの2019年改訂時、これまで使用されているクレアチニンよりも感度の高い腎機能マーカーとして新たにSDMAを採用しました1)。これを契機にSDMAは全世界で知られるようになり、慢性腎臓病の早期発見の検査項目に組み込まれるようになったのです。採用から約3年が経過した現在、改めてこれまでの腎臓病検査とSDMAの大きな相違点、そして動物病院で活用されているSDMAの実際についてお伝えします。

従来から行われてきた腎臓病検査とSDMAとの相違点

これまで臨床の現場で一般的に行われてきた腎臓病検査項目は、主にBUN、Cre、Ca、P、尿検査、及びX線検査でした。特にIRISのCKDのステージングにおいて重要な項目はCreであり、その数値によってⅠからⅣ段階で分類されています。しかし、Creの上昇は腎機能の75%が失われた段階で上昇するとされており、残された腎機能が1/4になってからの治療のスタートが限界だったのです。

これに対し、新たに採用されたSDMAでは、腎機能の40%が失われた段階で数値が上がり始めるのが大きな特徴であり、これまでのCreと比較してもより早期での慢性腎臓病を見つけてあげることが可能になりました2。また、Creは筋肉量で数値が左右されることが指摘されており、SDMAはその影響を受けないことから、正しいステージングをする上でもメリットがあります。

動物病院でのSDMAの活用事例

CKDは、初期では無症状であることがほとんどであるため、臨床の現場では初期でCKDを疑うのは困難です。したがって、早期に発見することが可能になったとはいえ疑うだけの兆候が乏しいことから、中高齢に差し掛かったイヌやネコの健康診断の検査項目としてデフォルトで組み込まれるケースが一般的です。

また、病院によっては、従来のCreと合わせてCKDのモニタリング項目としてSDMAを追っていく活用方法も見られます。

まとめ

SDMAが一般化され約3年が経過し、早期CKDの診断が可能になったことはもちろん素晴らしいことですが、検査の課題も見えてきました。どのバイオマーカーにも言えることですが、その検査だけで100%の感度と特異度を持って診断できるわけではありません。新たな検査を活用していくためにも、その限界をよく理解し従来の検査と共に総合的に判断する臨床力を培っていくことは、これからも変わらないことなのかもしれません。

獣医師M

参考文献

  1. IRIS International Renal Interest Society.
  2. Nabity MB, Lees GE, et al. Symmetric dimethylarginine assay validation, stability, and evaluation as a marker for early detection of chronic kidney disease in dogs. J Vet Intern Med.2015;29(4):1036–1044.