【日本獣医生命科学大学】雌イヌの黄体期糖尿病における避妊の重要性

今回はイヌで多い、避妊をしていない雌イヌの糖尿病の話をします。

イヌの糖尿病の原因として、①併発疾患なくインスリン分泌がなくなるもの(原因不明、遺伝的なものと考えられる)、②副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)に併発したもの、③膵炎、④雌イヌの黄体期に発症するものに大きく分けられます。

今回は特に、④の雌イヌの黄体期に発症するものについてご紹介します。

黄体期に発症する糖尿病のメカニズム

まず、雌イヌでは妊娠をしてもしなくても発情出血の後に黄体期が約2ヶ月続きます。これはイヌに特徴的なもので、この時期には巣作り行動をしたり、乳汁が出ることもあります。

この黄体期に卵巣から出るホルモンはプロゲステロンというホルモンであり、約2ヶ月にわたって分泌されます(黄体期の10~30日目が分泌のピーク)。
プロゲステロンはインスリン抵抗性を引き起こすステロイドホルモンであり、インスリンの作用を低下させます。このため、黄体期にインスリンが効かなくなり、高血糖になり、糖尿病が発症するというメカニズムになります。

インスリン投与から離脱できた症例紹介

今回紹介する症例は、比較的軽度の糖尿病と診断され、その翌日に避妊手術が行われました。
その後は3週間かけて徐々にインスリンの投与量を減量し、最終的にインスリン投与から離脱できました。

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日本獣医生命科学大学 森昭博、左向敏紀

【日本獣医生命科学大学 左向先生】糖尿病とは??~イヌ編~