腎臓の変化と円柱について

腎臓の検査と言えば、代表的なものが血液検査や尿検査です。最近では機械で測定する病院も増えてきました。尿検査は、尿試験紙や尿比重、尿沈渣の検査などにより診ることが一般的です。尿沈渣の検査では尿石症の結晶の評価がメインになりがちですが、他にもさまざまな情報が詰まっています。例えば、円柱に注目することで、腎臓の尿細管で起こっている変化をつかむことができるので、腎臓の、より詳しい情報が得られるかもしれません。

尿検査で分かること

尿検査と一口に言っても、さまざまな項目があります。尿比重のほかにpH、蛋白、尿糖、ケトン体、ビリルビン、潜血反応に加えて尿沈渣の顕微鏡下での検査などがあります。尿沈渣では血球・円柱・細胞・結晶・細菌・精子・寄生虫卵などが確認できます。尿検査を行うことで腎臓病のほかにも糖尿病や膀胱炎、膀胱腫瘍などを疑うことができるでしょう。

円柱の量と比重

今回は、尿検査のなかでも円柱に注目していきます。円柱の数が多数出ることで腎臓病が疑われますが、このとき、尿比重も重要です。通常、低倍率で1視野あたり2~4個がボーダーラインですが、低比重の尿で2~4個の場合はさらに注意が必要です。また、一時的な障害で円柱が出ているのか、持続的にでているのかも重要となってきます。疑わしい疾患がある際は、尿検査を継続的に行う必要があります。

円柱の種類

無色均一無構造の硝子円柱は少量であれば問題ありませんが、大量にでている場合は腎障害が疑われます。顆粒円柱は硝子円柱の中に顆粒が含まれたもので、尿細管を中心とした病変を疑います。蝋様円柱は尿細管上皮の変化で現れる円柱で、アミロイド症で見られることもあります。脂肪円柱はネコでは腎不全で見られることが多く、イヌの場合は糖尿病に伴う腎障害で出現することがあります。上皮細胞円柱は急性の尿細管壊死に伴ってみられます。白血球円柱は腎盂腎炎のほかに間質性腎炎、糸球体腎炎などで認められることがあります。

まとめ

検査と言えば基本的には血液検査がメインとなりますが、膀胱や腎臓の病気を疑う際には尿検査をすることが多くなります。尿検査を行うことで、さまざまな情報が得られます。特に腎臓病を疑う際は尿比重や尿蛋白にばかり意識を向けがちですが、これを機に少し円柱に注目してみると今後の診療の助けになるかもしれません。

獣医師T

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