動物病院でイヌの炎症マーカーの測定を行う意義と疾患の紹介

動物病院で炎症マーカーを測定する上で最も有用性が高いことは、来院された動物の疾患の振り分けが可能であることではないでしょうか。「元気がない」「食欲がない」など、疾患を鑑別していく上であまり特異的ではない症状に対して、その疾患は炎症性疾患なのかどうかが判断できれば、その臨床的意義は大きいものになります。また、ベッドサイドで治療の経過をモニタリングできることも、現在の治療がうまくいっているかどうかを判断する上で意義は大きいと言えるでしょう。

今回は、動物病院でのイヌの炎症マーカーが上昇する具体的な疾患、また、測定に際しての注意点についてお伝えしていきます。

炎症マーカーが上昇する疾患

動物病院で、イヌの炎症マーカーとして一般的に使用されているのはCRPという項目です。CRPは急性相タンパクの一つで、各種感染症、手術や外傷などによる組織障害、および腫瘍性疾患などの刺激によって上昇します。実際にCRPが上昇する疾患として遭遇する機会の多いものとしては、子宮蓄膿症や膵炎や肺炎などが挙げられます。

測定に際しての注意点

急性相タンパクといえど、炎症による刺激が起こってから24-48時間経過しないとCRPを検出できません。したがって、“検出された数値は現在の状況ではなく1-2日前の状態を示している”ということに注意しましょう。また、膀胱炎や結膜炎など、炎症はあるが局所でしか起こっておらず、全身性の炎症反応に至らない疾患ではCRPは上昇しない点も注意が必要です。さらに、CRPが上昇するが炎症性疾患ではないものも報告されており、具体的には免疫介在性溶血性貧血やアジソン病がそれに該当します。

まとめ

CRPをはじめとした炎症マーカーは体内全体で起こっている炎症の程度を数値化したもので、どの臓器で起こっているのかを特定することはできません。また、測定に際しての注意点にあるように炎症性疾患なのにCRPが上昇しない疾患や、逆に炎症性疾患ではない疾患でもCRPが上昇してきてしまうものもあります。検査の限界をよくよく理解すること、そしてあくまでも検査の項目の一つということを認識し、その他の検査や動物の全身状態から総合的に判断し、診断や経過のモニタリングをしていく必要があることを忘れないようにしましょう。

獣医師N

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