イヌとネコの糖尿病の初期治療の注意点

イヌとネコの糖尿病の初期治療の注意点についてお伝えする前に、その両者における決定的な違いを2つお伝えさせていただきます。1つ目はイヌとネコの糖尿病に至る病態の違いです。イヌでは膵β細胞の減少に起因したインスリン欠乏によるⅠ型糖尿病が多いのに対し、ネコでは肥満などに起因したインスリン抵抗性によるⅡ型糖尿病が多いということです。2つ目は治療によって寛解するかどうかの違いです。イヌではインスリン治療によって寛解することはなく生涯にわたって治療が必要になるのに対して、ネコでは原因によっては寛解する可能性があります。今回は、この両者の違いを理解した上で、糖尿病の初期検査、入院管理及びインスリン選択についてお伝えしていきます。

初期検査

まずは、血糖値の測定と尿検査についてです。イヌでは空腹時の血糖値が200mg/dL、ネコでは300mg/dLを超える高血糖であること、また尿糖陽性が持続的に見られることをもって糖尿病と診断します。また、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に移行していないかどうかの確認も重要です。なぜなら、DKAでは命に関わる状態なので、緊急治療が必要になってくるからです。確認方法としては尿検査にてケトン体の有無を確認します。他にも脱水による急性腎不全の有無、易感染性疾患でもあることから膀胱炎などの感染症にもなりやすく、合併症の有無もこれらの検査によって確認しましょう。

入院管理とインスリン選択

基本的な入院管理としては、食事管理に加えてインスリン投与による血糖値の定期的な測定が必要になります。また、DKAが見られる場合では、静脈輸液による脱水の補正と持続的インスリン静脈投与が必要になってくるでしょう。使用するインスリン製剤は作用時間によって即効型、混合型、中間型及び持続型に分類されており、一般的にイヌでは中間型または持続型を、ネコでは持続型をいずれも1日2回投与します。血糖曲線を作成し、適切な血糖値を維持できるように管理することが大切です。

まとめ

DKAをはじめ、糖尿病ではその合併症の有無を適切に診断し、それぞれにあった治療ができるかどうかが、予後に大きく関係してきます。また、そこを乗り切った後も、血糖値のコントロールがうまくいかない場合は、低血糖でふらふらになったり、DKAで入退院を繰り返したり、慢性的な高血糖による白内障を併発したりします。実際に自宅で治療をしていただくのは飼い主さまであり、数年以上にわたる長期治療を継続するモチベーションの維持のためにも、糖尿病に至った原因と生活環境の改善、動物と飼い主さまが無理なく治療を実行できるように配慮していくことも獣医師に求められているのかもしれません。

獣医師N

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