【松波 登記臣先生】症例報告:血糖コントロールに苦慮した大型犬の糖尿病の場合~3回目~

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引き続き、ラブラドールのAちゃんの治療経過についてご紹介します。

治療経過~インスリン療法開始~

レギュラーインスリン治療を開始し始めて、おおよそ2日前後でケトンは消えますが(中にはたちの悪いケトアシドーシスもいますが(ネコに多い))、長くてもレギュラーインスリンの使用は4日までとしています。特にレギュラーインスリン製剤は、他のインスリン製剤よりも抗体生成されやすいという報告もありますので、長期使用および頻回使用は避けたほうが良さそうです。

経過に戻りますが、だいたい2日で尿中ケトン体が消失したのを確認してから、皮下注射のインスリン製剤に切り替えていきます。イヌの糖尿病での第一選択薬はNPH製剤(商品名はノボリンやヒューマリン)です。これは科学的にも証明されており、オーストラリア・クイーンズランド大学のランド先生ら(現在はドイツの大学に移籍しています)が膨大な臨床研究から導き出されたものです。

参考までに第二選択薬としてはインスリンデテミル(商品名はレベミル)、第三選択薬はNPH+デテミル(これは強化インスリン療法です)になります。2018年に新たにガイドラインが更新され、イヌ用としてVetsulin(日本未発売)も紹介されていますが、私は経験したことがありませんので使用感はわかりません。

第一選択のNPHの初期薬用量は、0.5 IU/kg BIDですが、0.3~0.75 IU/kg BIDの範囲内で使用することが多いと思います。間違っても1.0 IU/kg BIDは超えないようにしていますが、そのような場合は、他基礎疾患の存在を明らかにすることや強化インスリン療法への切り替えが必要となってくるときだと思います。本症例では、NPHを0.5 IU/kg BIDと設定し、インスリン療法のスタートをしました。

NPH 0.5 IU/kg BIDでスタートする前に行うこととして、いつもはじめに空腹時血糖値から食後血糖値(食後60分)までどれだけ血糖値が上昇するか確認しておきます。

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インスリン製剤の種類と特徴~AAHAの糖尿病治療ガイドライン2018から