【日本獣医生命科学大学 左向教授】血糖コントロールがうまくいかない場合の対処方法・原因の考え方(ネコ編)

今回はネコについてみていきます。
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ネコの糖尿病とは

ネコの場合はインスリン非依存状態であるが、インスリン抵抗性が強いか、インスリン抵抗性があるだけでなくインスリン分泌量がやや足りない状態のこともある。糖尿病管理のために、低炭水化物・高タンパク質食を使用している場合、食後血糖はほとんど上昇しない。このような場合、インスリン抵抗性に対応するためにヒトの基礎分泌に対応する持効型インスリンを使用する。

インスリンの選択

個体によりインスリン製剤により合う、合わないがある。同じ持効型インスリン製剤の種類を変更してみることが良い。

持効型インスリンとしては、インスリンデグルデク(トレシーバインスリングラルギン(ランタスインスリンデテミル(レベミルプロジンクが知られている。

持効型インスリンの特性として皮下からの吸収がゆっくりで長時間効果があるが、吸収、効果が不安定であるのが特性でもある。製剤により皮下からの吸収遅延方法が異なり、症例により各インスリンの効果が異なる。このため、症例ごとに合う、合わないがあり個々に確認する必要がある。

同じ製剤でも日々の血糖曲線を調べると大きく異なることがわかり、使用日により効果が異なることも多い。
こういう場合は、

  1. 持効型インスリンということで諦める。個々の日内変動は気にせず、フルクトサミン、糖化アルブミンといった長期マーカーでコントロールする。
  2. できる限り効果を安定させるために、来院ごとにオーナーのインスリン投与方法を確認する。

どちらにしても、低血糖時間ができないようにだけは注意する。

また持効型インスリンは製剤により投与部皮下に“しこり”を作りやすいので、投与部位を移動するようにする。しこり部への投与はインスリンが効かないことがある。しこりができる製剤では速やかに他の製剤に変更する。

併発症の存在

先端巨大症

成長ホルモンの過剰分泌により、頭部、肢端部の肥大などどもに、インスリン抵抗性が発生して、糖尿病を引き起こす。インスリン投与量が非常に多くなる。1回の投与量が1U/1kgを越えるような場合は疑う。1回の投与量が10U/kgを越えるような場合もある。
IGF1の測定で確認を行う。糖尿病猫の約20%でIGF1の濃度が上昇しているとの報告がある。MRI検査等で腫大の確認後、本来なら放射線治療(外科的切除)などが望ましい。持効型だけでは食後血糖を抑制できないために、NPHインスリンや速効型インスリンを併用しなければならない事もある。

膵炎

慢性膵炎の診断・治療はなかなか難しいが、糖尿病の約44% がfPLIの上昇があるとの報告もある。我々の調査でも約50%に膵臓リパーゼの上昇を認めている。膵炎症状の再燃によりインスリン抵抗性が発生して、インスリン投与量が上昇する。

対応方法としては、膵炎症状の再燃時にはインスリン投与量を早期に上昇し、漸次減量する方法を取る。

甲状腺機能亢進症

併発または甲状腺機能亢進症のために血糖が上昇しているもので、T4の測定により、甲状腺機能亢進症の存在を確認して甲状腺機能亢進症の治療を優先する。

フードの選択

ネコの糖尿病に対しては、高タンパク質食が優れた糖尿病管理食であるが、ネコ自体および飼い主が受け入れない場合、併発症のために他の食事を選択しなければならない場合がある。その場合はコントロールが難しいことがある。

一般的食事を用いている場合、高タンパク質食(低炭水化物食)を使用していない糖尿病猫の場合(消化器用フードなど)、特に腎臓病用食など低タンパク質食(高炭水化物食)などを使用している場合は、持効型インスリンだけでは、食後血糖の上昇を抑えられないことが多い。

この場合は、プロジンクⓇや、持効型でもネコではやや効果が短いデテミル(レベミルⓇ)を用いる。食後の血糖上昇抑制と持効型を兼ね備えた、デグルデクに超速効型インスリンを配合したライソデクⓇを試してみるのも良い。

日本獣医生命科学大学 左向敏紀

【日本獣医生命科学大学 左向教授】糖尿病の症状

【日本獣医生命科学大学】ネコの糖尿病と膵炎の治療