炎症マーカーCRPと白血球数が上昇する要因や違い、同時測定の有用性について解説

CRP(C反応性蛋白)は、炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するタンパク質で、炎症の指標として使用されています。そして、白血球数も炎症の指標として広く使用されています。そこで今回は、これらの炎症マーカーが上昇する要因と炎症における変動の違い、同時測定の有用性についてお伝えします。

CRPと白血球数が上昇する要因の違い

CRPは細菌感染や自己免疫疾患、悪性腫瘍などにおいて、炎症あるいは組織壊死が存在する場合に上昇します。炎症が起きたり、組織が破壊されたりすると、CRPは12時間以内に急激に上昇し、回復すると急速に正常値に戻るといった具合です。

このように、短時間で反応するタンパク質を「急性期蛋白」と呼び、CRPは急性炎症の指標として、もっとも広く使用されています。ただ、CRPは細菌の細胞質膜に含まれるリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合する血漿蛋白であるため、細胞質膜や細胞壁の構造を持たないウイルスには反応せず、ウイルス感染時には正常値であることが多いです。

一方、白血球数は炎症に特異的ではなく、激しい運動、中毒性疾患、痙攣など炎症以外の要因でも上昇する傾向があります。このように、CRPと白血球数が上昇する要因には違いがみられます。

炎症におけるCRPと白血球数の変動と乖離が生じるとき

CRPと白血球数は、多くの病態では同じような変動をしますが、炎症が起こってから上昇するまでの時間と下降するまでの時間が異なります。

まず、外傷や細菌感染などが生じると、白血球がこれを認識し、すばやく攻撃することで、発赤や腫脹、熱感といった炎症が起こります。

続いて、炎症時に細菌や壊死物質を貪食した単球や、マクロファージからIL-6やTNFαなどのサイトカインが分泌され、そのサイトカインが肝細胞に作用してCRPなどの急性期蛋白の産生を促進するため、白血球数が上昇してからCRPの上昇が起こります。

こういった経緯から、外傷や細菌感染後、白血球数の上昇は数時間以内と早く、CRPの上昇は外傷や細菌感染から始まるという乖離がみられるのです。

炎症におけるCRPと白血球数の同時測定の有用性

CRPは炎症に特異的に反応しますが、血中濃度の上昇が明確になるのに半日ほどを要するため、この間は白血球数を参考にしましょう。CRPと白血球数を同時に測定することには以下のような有用性があります。

ウイルス感染と細菌感染の鑑別

感染症において、CRPは細菌感染では上昇し、ウイルス感染ではあまり上昇はしません。そのため、細菌感染かウイルス感染かの鑑別に有用です(CRP→ ウイルス感染、CRP↑ 細菌感染)。

細菌感染の時期(活動性)の推定

細菌感染が起こると、白血球数がより早期に上昇しCRPが遅れて上昇します。また、症状が回復に向かうと、白血球数がより早期に下降しCRPが遅れて下降します。これにより、CRPと白血球数を同時に測定することで、感染の時期(活動性)の推定が可能です(感染初期:CRP→ WBC↑、感染後期:CRP↑ WBC→)。

重篤な疾患の発見

CRPと白血球数を同時に測定することにより、ウイルス感染に隠れた重篤な疾患の見落としを防ぐことが可能です(CRP→ WBC↑ その他疾患が存在する可能性あり)。

まとめ

CRPと白血球数を有効に活用することで、診断の精度をより上げることが期待できます。同時測定を行い、診察にお役立てください。

<参考>
1)Clinical Immuno-Review 41号,253-260,1984
2)鈴江純史,小児実地医療においCRPとWBCを診療時に即時測定する効果と意義,Readout 19 :68-73,1999
3)血漿蛋白と炎症マーカー,大谷英樹,臨床検査,33,11,1497-1500, 1989
4)血液専門医以外のための血液疾患対応マニュアル 症候編 白血球増加と減少のプラマリケア,武蔵学,治療,84,2,231-235,2002

獣医師N

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