ハムスターにおける尿検査のポイントと有用性

通常、健康なハムスターの尿は透明~薄黄色をしています。しかし、炭酸カルシウムやリン酸アンモニウムマグネシウムを含有するため、尿が白っぽく濁る個体や、生理的なポルフィリン色素や食事の代謝生産物により、生理的有色尿がみられる個体もいます。
そのため、視診で血尿など尿の異常を判断することが難しい場合もあり、視診だけではなく、尿定性や尿沈渣といった検査が有用です。そこで今回は、ハムスターの尿検査のポイントや、診断において尿検査が有用な膀胱炎と尿石症についてお伝えします。

採尿の際の注意点

正確な尿検査結果を得るためには、異物が混入しないように尿だけを採取することが重要です。まず、ハムスターを床材の敷いていないプラスチックケースにしばらく入れ、排尿したらすぐにスポイトなどで採取しましょう。

あるいは、トイレ容器の砂を撤去し、空の状態にして尿を採取してください。尿が採取できたら、尿が腐敗して変性しないよう、30分以内に尿検査を行います。

もし院内での採取が難しい場合には、自宅で採取した尿を保冷剤で冷やしながら動物病院まで持って来てもらうよう飼い主さまに伝えましょう。来院前3時間以内にスポイトで採取した尿を、漏れないようラップに包んでビニール袋などに入れ、冷蔵庫で保管してもらったうえで持参してもらうとよいでしょう。

ハムスターの尿性状と尿沈渣性状の特徴

健康なハムスターの尿は、透明~薄黄色 でpH7.0~8.5とアルカリ性を呈します。また、尿中にカルシウムが排泄され白っぽく濁ることもあり、イヌやネコではカルシウムの尿中排泄が2%なのに対し、ハムスターでは45~60%ともいわれています。さらに、正常でもストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結晶が確認されるのも特徴のひとつです。

尿検査が有用な泌尿器疾患

ここでは、診断において尿検査が有用な膀胱炎と尿石症について解説します。

膀胱炎

ハムスターの膀胱炎では、頻尿、血尿といった症状がみられます。膀胱炎では尿がアルカリ性に傾き、pHがさらに高くなるのが特徴です。さらに、赤血球や白血球、正常でもみられるストルバイト結晶の増加が確認でき、治療としては、抗生剤の投与など内科的治療が行われます。

尿石症

尿石症の多くは血尿、頻尿、努力性の排尿動作、排尿障害といった症状がみられたり、X線検査で尿結石が偶然見つかったりする場合もあります。尿結石は尿道や腎臓でも時に認められますが、主に膀胱で確認されることが多いでしょう。
ハムスターでは、カルシウムを主成分とするシュウ酸カルシウム尿石ができやすいといわれています。ハムスターの尿はアルカリ性のため、ストルバイト尿石ができやすい環境下にも関わらず、シュウ酸カルシウム尿石ができやすい明確な理由は不明です。

ただ、ハムスターがヒマワリ、くるみなどの種子のような高カルシウム食を好むことや、尿中へカルシウムを大量に排泄することが理由のひとつではないかと考えられています。

ハムスターの尿石症の治療では、X線検査で確認された尿結石を外科的に摘出することが選択されます。また、再発防止のために内科的治療や水分を多く含む葉野菜を与えるなどの食事管理を行うことも大切です。

まとめ

ハムスターの診察において、尿検査は健康状態を把握するうえで非常に有用です。正確な尿検査を行い、日々の診療にお役立てください。

<参考>
1)霍野 晋, エキゾチックアニマルの治療指針,vol2,インターズー ,2001
2)Capello V.Pet hamster medicine and surgery,part III: infectious, parasitic and metabolic diseases.Exotic DVM3:27-32.2011
3)Chow FH,Taton GF,Boulay JP,Lewis LD,Remmenga EE,Hamar DW.Effect of dietary calcium, magnesium, and phosphorus on phosphate urolithiasis in rats.Invest Urol17:273-276.1980

獣医師G

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