イヌのメラノーマは皮膚、粘膜、付属器など多様な部位に発生する腫瘍です。なかでも口腔内メラノーマは悪性度が高く、臨床腫瘍学領域において治療上の課題となっています。また、局所浸潤性が強く、早期にリンパ節転移や肺転移となることから、適切なステージングと早期介入が予後を左右します。本記事では、メラノーマの臨床的特徴と診断、治療の基本方針、近年注目されるメラノーマワクチンについて解説します。
メラノーマ発生の臨床的特徴
皮膚メラノーマは、比較的良性の経過をたどる症例も存在しますが、口腔および爪床発生例は悪性度が高い場合が多いです。特に口腔内メラノーマは、骨浸潤を伴うことが多く、顎骨の変形、出血、口臭、流涎、摂食障害などの臨床症状が見られ、著しいQOL低下につながります。メラノーマは黒色を呈することが多いですが、黒色を呈さないアメラノティックメラノーマも一定割合で存在するので、見た目だけで判断することは危険です。治療選択の前提として、正確な病理学的評価が不可欠です。
診断と治療の基本方針
細胞診が第一選択になりますが、メラニン顆粒の乏しい症例では診断が困難で、病理組織検査や免疫染色を含む総合的評価が重要となります。特に口腔内メラノーマでは、浸潤範囲を把握するためにCT検査が推奨され、さらに胸部レントゲンもしくは胸部CTにより肺転移の有無を確認します。リンパ節への転移の有無は触診によるサイズの確認、FNAによる細胞診で確認することも重要です。
治療の第一選択は外科的切除ですが、腫瘍の位置によっては十分なマージン確保が困難になることがあります。切除が不十分な場合、または解剖学的制約が大きい症例では放射線療法が局所制御の中心的役割を担います。化学療法は現在のところ転移抑制などの補助的使用にとどまることが多く、メラノーマの治療の基本は外科的アプローチです。一方で、局所進行が著しい場合や全身状態に制約がある場合は、疼痛管理、出血のコントロール、栄養管理などQOLを軸とした緩和的アプローチも選択肢として重要になります。
新しい治療の可能性:メラノーマワクチン
近年注目される治療のひとつに、メラノーマワクチン(DNAワクチン)があります。この治療方法は免疫療法の一種で、がんの三大療法である「外科手術」「放射線治療」「化学療法」とはまったく異なる治療法です。
日本において、条件付きで承認されている適応は「外科切除および放射線治療を実施したステージ2または3の口腔内メラノーマにおける生存期間の延長」です。すなわち、肺転移が起きているステージ4の症例や、外科手術を実施していない症例に対しての使用は、適応外です。海外では一定の延命効果が報告されているものの、国内では検証中の段階で、さらなる臨床エビデンスの蓄積が期待されます。
まとめ
イヌのメラノーマは発生部位によって動態が異なり、特に口腔内メラノーマは進行が速く、転移リスクが高いことが特徴です。早期診断、適切なステージ評価、三大治療といわれる外科治療・放射線治療・化学療法を組み合わせて、最も効果的な治療を行うことが重要です。新しい治療方法として、メラノーマワクチンを使用する免疫療法が始まっています。メラノーマワクチンの効果についてはまだエビデンスの蓄積が必要な段階ではありますが、今後の治療体系に新たな可能性をもたらすものと考えられています。メラノーマは依然として治療が難しい腫瘍のひとつです。今後の研究の進展により、本疾患に対し治療の選択肢が増えることに期待します。
獣医師O
【参考】
1.ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン オンセプト®メラノーマ新発売、初の犬の腫瘍に対するDNAワクチン
2.Bergman PJ, Wolchok JD. Of mice and men (and dogs): development of a xenogeneic DNA vaccine for canine oral malignant melanoma. Cancer Therapy. 2008;6:817-826.
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