糖尿病のネコに免疫疾患が併発したときはどうする?

ネコの糖尿病は中年~高齢のネコに多く発生しますが、その歳のネコには、糖尿病以外の病気が併発することも多いです。
それらの病気の中には、免疫抑制を行わないと治療できないものがいくつかあります。

ネコに使う免疫抑制剤はステロイド剤(グルココルチコイド)が多くなりますが、グルココルチコイドは血糖値のコントロールに影響するため、糖尿病のネコには使いたくない薬です。今回は、そんな糖尿病のネコに対する免疫抑制剤の使い方について考えてみましょう。

■免疫抑制剤の血糖値への影響

ネコで最もよく使われるグルココルチコイドには、インスリン抵抗性を高める働きがあることはよく知られています。糖尿病を発症していないネコにも、長期的にグルココルチコイドを使用すると糖尿病を誘発することもあります。そのため、糖尿病に罹患しているネコや糖尿病の素因のあるネコに対し、グルココルチコイドを使用するのにはリスクがあるのです。

グルココルチコイドの次にネコによく使われる免疫抑制剤が、シクロスポリンです。シクロスポリンの投与によるネコの血糖値への影響ははっきりしていませんが、ヒトではシクロスポリンの投薬が糖尿病のリスクを増大することが指摘されています。ネコでもシクロスポリンやタクロリムスの使用によって糖代謝の変化が起き、糖尿病のリスクが上がる可能性も考えられています。

その他の免疫抑制剤として、ミコフェノール酸モチフェルはグルココルチコイドやシクロスポリンに比べると、糖尿病の動物への安全性は高いと言われています。ただし、膵臓のβ細胞の機能に影響する可能性があるという報告もあるため、糖尿病のネコに使う際には少し注意しなければなりません。

■糖尿病のネコに免疫抑制剤を使う時に考えること

糖尿病のネコや糖尿病の素因のあるネコに免疫抑制剤を使う時に考えるべきことは、以下の通りです。

1.本当に免疫抑制療法が必要か?

免疫抑制療法を始める前に、本当にそれが必要なのか、診断をもう一度考え直してみましょう。免疫抑制療法ではなくNSAIDsやオピオイドなどによる抗炎症・鎮痛薬など糖代謝への影響が低い薬が有効である病気もあります。

2.どの免疫抑制剤を使用するか?

グルココルチコイドは、最も糖代謝への影響が大きい免疫抑制剤です。糖尿病のネコや糖尿病のリスクの高いネコには、グルココルチコイド以外に使える免疫抑制剤を考える必要があります。

そんな時に最も効果が期待でき、副作用の少ない免疫抑制剤として挙げられるのがシクロスポリンになります。シクロスポリンは、糖尿病が疑われるネコに使う免疫抑制剤のファーストチョイスになるケースが多いです。ただし、グルココルチコイドに比べ費用が高い点や、飲ませること自体が難しいという欠点もあります。

ミコフェノールモチフェルやタクロリムスも、糖尿病のリスクのあるネコにグルココルチコイドの代わりとして期待される薬です。これらの薬は、ネコのIMHAに有効であったという報告やヒトのIBDに有効だというデータもあり、今後ネコの免疫疾患への応用が広がる可能性があります。ただし、今のところネコの免疫疾患への使用のデータが少なく、更なる研究が必要になります。

3.グルココルチコイド誘発性の糖尿病なら、薬の減量も

グルココルチコイドを使用したことで発症した糖尿病では、グルココルチコイドの減量によって糖尿病から離脱できる可能性があります。投与量の減量や、投与間隔の調整などによって免疫疾患と糖尿病をコントロールできないかどうか検討してみる価値はあるでしょう。

■まとめ

ネコの糖尿病は基本的に一生付き合っていかなければならない病気であり、そのコントロール中に他の病気を併発してしまうこともあります。特に厄介になるのが、ステロイドが必要となる免疫疾患の併発です。

そんな時に大切なことは、本当に免疫抑制剤が必要な病気なのか、その診断をもう一度確認することと、グルココルチコイド以外の免疫抑制剤の選択肢を持っておくことです。糖尿病のリスクのあるネコの併発疾患をうまくコントロールできるよう、この記事が薬の使用方法について考える機会になれば幸いです。

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