飼いネコの25%~40%は肥満といわれており、肥満のネコは、2型糖尿病をはじめとする多くの代謝性疾患を起こしやすい傾向があります。
そこで今回は、線維芽細胞増殖因子 21 (FGF21)類似体による減量効果についての報告を紹介します。
FGF21とは
線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)は、線維芽細胞をはじめ、さまざまな細胞に増殖活性や分化誘導など、いろいろな作用を及ぼす多機能性細胞間シグナル因子です。
FGF(線維芽細胞増殖因子)は22種類あり、それぞれ独自の生理作用をもっています。FGF21はそのひとつです。
人間や動物において、FGF21はインスリン抵抗性、非アルコール性脂肪肝疾患、肥満の改善に役立っています。
FGF21アナログの一つであるLY2405319(Eli Lilly and Company、インディアナポリス)は、より安定的で、代謝効果を保持している改良ヒト組換えFGF21類似体であり、げっ歯類と霊長類モデルの肥満および高血糖治療に成功しています。
LY2405319は、大量生産が簡単で、未改変ヒト組換えFGF21にくらべて、熱的および立体構造的な安定性が向上しているため、動物病院の商業的製剤として適していますが、FGF21類似体を伴侶動物に使用した研究は非常に少なく、ネコにおけるFGF21に関する研究も発表されていませんでした。
米国オーバーン大学での研究
供試猫:8匹の去勢オス。全頭、過体重または肥満。
4匹のネコを治療群、4匹(1匹が重度の食欲不振となり途中で離脱。したがって3匹)を対照群としました。
治療群は滅菌生理食塩水で希釈した10 mg/kg/日の滅菌組換えFGF21(LY2405319) を14日間皮下注射しました。
対照群は滅菌生理食塩水5 mlを14日間皮下注射しました。
結果
治療群は、自由な給餌にもかかわらず、15日目には体重が約5.9%減少しました。
ただ治療群は注射をやめると体重が急速に回復しました。
対照群はほぼ変化しませんでした。
食事量が両群で差がないということから、食欲抑制ではなく代謝経路の活性化による減量と解釈することができます。
代謝の改善に関しては、肝臓内の脂肪量が減少傾向でした。
また、血液中の ALP(アルカリホスファターゼ)が有意に低下したので、 脂肪肝改善の兆候がありました。
その他の代謝指標である血糖値、インスリン、コレステロール、トリグリセリドなどに大きな変化はなく、腸内細菌に関しても、多様性や構成に有意差がありませんでした。
そして、副作用もなく、投与後2年間健康に生存したため、安全性にも問題はないという見方がされています。
まとめ
FGF21類似体注射によるFGF21 経路の活性化は、カロリー (食物) 摂取量や水分摂取量に大きな影響を与えることなく、肥満および過体重のネコの体重減少に安全に作用する可能性があることがわかりました。
今回の研究では、代謝の改善が、脂肪肝改善の兆候だけにとどまりました。
今後は、より多くのネコや長期投与での研究によって、体重減少効果だけではなく代謝の改善にも役立つという結果が得られることを期待されています。
獣医師Y
【参考情報】
1.細胞外分泌因子FGF21による生体機能調節
生化学 第88巻第1号,pp. 86‒93(2016)
2.Direct activation of the fibroblast growth factor-21 pathway in overweight and obese cats
Front. Vet. Sci., 23 January 2023, Sec. Animal Nutrition and Metabolism Volume 10 – 2023 https://doi.org/10.3389/fvets.2023.1072680






