肥満細胞腫を発症した重度肥満の糖尿病ネコへのステロイド外用治療

高齢になるといくつかの病気が併発し、どの治療を優先的に行うか悩むケースが多くなります。特に糖尿病患者では、他の病気の治療をすることで糖尿病のコントロールが上手くいかなくなるケースもあるのです。

今回は、手術がためらわれた重度肥満の糖尿病のネコの皮膚肥満細胞腫に、ステロイドの外用治療を行った例をご紹介します。

糖尿病の重度肥満ネコに肥満細胞腫が発症

症例は、8歳雑種ネコ。体重8㎏でBCS5の重度肥満です。1ヶ月前に糖尿病と診断し、インスリンにより治療をしています。血糖値のコントロールは比較的良好であり、少しずつ体重は減少していますが、まだ重度肥満状態です。

皮膚にできものができたという主訴により診察をしたところ、頭部皮膚に直径約1.5㎝の腫瘤を触知しました。その腫瘤のFNAを行ってみると、多数の肥満細胞が採取されたため、肥満細胞腫と診断しました。

ステロイドの外用薬により2週間で肥満細胞腫が消失

糖尿病と重度の肥満による麻酔のリスクがあることを伝えたところ、飼い主さまは手術に難色を示したため、まずは投薬による治療への反応を見ることになりました。しかし、ステロイドの全身投与は、糖尿病を悪化させるリスクがあります。そこで、局所治療としてトリアムシノロンと抗生物質の合剤の外用薬投与を指示しました。

投与後1週間の再診では、わずかに腫瘍サイズが小さくなった程度でしたが、さらに1週間後の再診ではすでに触知できる腫瘤は消失していました。そこで、外用薬の投与頻度を2日に1回に減らして2週間使用し、その後腫瘤が再発していないのを確認したため、投与を中止しました。現在は投薬中止から3ヶ月経ちますが、腫瘤の再発は認めておりません。

ステロイド外用薬でも血糖値への影響はあると言われていますが、今回の症例では投薬前後で血糖値への影響は少なく、インスリンの増減は必要ありませんでした。

肥満細胞腫に対するステロイドの局所投与の研究報告

肥満細胞腫の治療には外科切除が第一選択となりますが、腫瘤の場所や大きさ、動物のコンディション、費用面などで手術ができない場合や、補助療法としてステロイドが使用されることは多いです。

ただし、通常肥満細胞腫にステロイドを用いる場合は、内服薬による全身投与になり、肥満細胞腫への外用ステロイドの効果についての報告はあまり多くはありません。

その中で、イヌの肥満細胞腫へのトリアムシノロン局所投与に関する研究が2018年に発表されています。5頭の皮膚肥満細胞腫のイヌに対し、トリアムシノロンの病巣内注射単独の治療により、完全寛解1頭、部分寛解3頭、不変1頭と、比較的良好な成績を報告しています。

まとめ

皮膚肥満細胞腫の治療をする際の第一選択は、手術による切除です。また、全身的なステロイドの投薬も、肥満細胞腫の治療には有効と言われています。

ただし、糖尿病やその他の全身的なコンディションにより、手術や全身的な治療が困難な場合には、ステロイド薬の外用薬や病巣内投与など、局所療法も効果がある可能性があります。

獣医師M

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