歯周病処置は糖尿病のイヌにとって、とても大事

糖尿病に罹患するとさまざまな併発疾患がみられますが、その中でも歯周病に罹患する割合は多くなっています。また、歯周病に対する処置を行うことで、血糖コントロールの改善につながることがわかっています。糖尿病でなくても歯周病になっている成犬はとても多いので、糖尿病の有無にかかわらず歯科処置を行うことは、今後の健康状態に良い影響を及ぼすでしょう。

歯周病は血糖値のコントロールの妨げに

ヒト医療でも糖尿病と歯周病の関係はよく話題になります。歯周病菌と生体内のマクロファージが戦うことでマクロファージから放出される物質がインスリンの働きを抑制し糖尿病が悪化すると言われています。

実際に糖尿病に罹患しているイヌで歯周病処置をおこなって糖化アルブミンと炎症性マーカーであるCRPを測定したところ、数値の低下がみられたため歯周病治療が血糖コントロールの改善につながると考えられています。

すでに重度の歯周病になっている場合は

重度の歯周病になっている場合は、歯磨きでは対処できません。また、無麻酔での歯石除去などを行っているトリミングサロンなどがありますが、とても危険です。表面上の歯石が取れても根元部分の処置ができていないため、見た目の改善以外は望めません。

すでに歯の根元が悪くなっている場合は、放置しておくと骨が融解し歯周病も悪化するので積極的に抜歯する必要があります。そのため、全身麻酔下で歯科用レントゲン検査を行い、歯の状態を確認した上で歯科処置を行う必要があります。すでに糖尿病を罹患している場合は麻酔に注意が必要です。

歯科処置後のホームケアも大事

歯科処置を行った後は、自宅でのホームケアが大切です。残った歯は放っておくとまた歯周病になり、将来的に抜歯することになりかねません。特に糖尿病の場合にはできるだけ麻酔はかけたくないため、毎日が理想ですが、少なくとも3日に1度は歯磨きを行うようにします。歯磨きの方法が間違っている飼い主さまが多いため、病院で歯磨きの指導を行うことはとても大切です。

まとめ

3歳以上の成犬のおよそ8割は歯周病に罹患しています。糖尿病になるイヌも基本的には3歳以上の場合がほとんどのため、歯周病を併発している子は多くいます。歯周病があると血糖値のコントロールがしにくくなることがあるので、歯周病処置を行うことは口腔内の清浄化の他に糖尿病とうまく付き合っていくために重要といえます。

獣医師O

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