ネコの多発性嚢胞腎とはペルシャ家系のネコで多発する嚢胞性の腎疾患です。近年ではアメリカンショートヘアや短毛種でも発生の報告がありますが、メカニズムは未だにわかっていません。
多発性嚢胞腎は最終的には慢性腎不全に移行します。そのため早期に発見し定期的な検査が必要であるといえます。
多発性嚢胞腎の原因
多発性嚢胞腎はヒトやネコの腎尿細管絨毛に存在する、ポリシスチンをコードする遺伝子であるPKD1の遺伝子変異が原因で引き起こされる疾患です。
人間ではPKD1遺伝子の変異による常染色体優性多発性嚢胞腎とPKD2遺伝子の変異による常染色体劣性多発性嚢胞腎があり、難病に指定されています。
現在では、ネコの多発性嚢胞腎の原因はPKD1遺伝子と言われておりPKD2遺伝子によるものは報告がありません。嚢胞形成のメカニズムに関しては未だに解明されてない部分が多いのが現状です。
多発性嚢胞腎の診断
多発性嚢胞腎は画像検査で発見されることが多いようです。嚢胞形成の進行度合いは個体によりさまざまで、無症状で長期間経過しているケースもあります。そのため、多発性嚢胞腎を疑って検査をする、というよりも健康診断やその他の疾患でエコー検査を行った際にたまたま発見されることや、腎不全の症状が出てから画像検査を行い診断されることが多くなります。画像検査では嚢胞の個数や大きさが確認できます。また、確定診断はPKD遺伝子診断です。
多発性嚢胞腎の治療
多発性嚢胞腎の根本的な治療はなく、基本的には対症療法です。嚢胞の数が少ない、または大きさが小さいようであれば臨床症状はあまり見られません。しかし、嚢胞が次第に大きくなり、腎臓を圧迫しネフロン数を減少させてしまうことで慢性腎臓病に移行していきます。定期的な尿検査や血液検査を行うことで腎機能の状態を把握し、適切な腎臓ケアを行う必要があります。
まとめ
ネコの多発性嚢胞腎は嚢胞の状態によって進行の度合いがさまざまですが、最終的には慢性腎臓病へと移行していきます。症状が出る前に、検診などで画像検査を行うことで早期発見につながります。また、多発性嚢胞腎が発見された場合、定期的な尿検査や血液検査を行うことで、適切な腎臓のケアをすることができます。根本的な治療はありませんが、内服薬や処方食、輸液など慢性腎臓病のステージに合わせて治療することで生存期間の延長につながるでしょう。
獣医師A
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