イヌの白内障と糖尿病

トイプードルは遺伝的に白内障になりやすいと報告の多い犬種です。
しかし、白内障はその他にもさまざまな原因により発生しやすく、特に糖尿病を罹患すると白内障になることが多くなります。
今回は、何年もの間、高脂血症の治療を行っており、セカンドオピニオンにて糖尿病・白内障を診断されたトイプードルの症例についてご紹介します。

 

慢性疾患における思い込みには注意が必要

紹介する症例はトイプードル去勢雄、7歳齢から高コレステロール血症、中性脂肪の高値、ALPの上昇が認められ、リポテストでは複合型の脂質代謝異常、腹部検査では胆泥症と診断していました。
治療として、処方食であるロイヤルカナンの満腹感サポートスペシャルを与え2年ほど様子を見ていました。
なお、検査に関しては血液検査で上記の3つの項目のみをモニターしていました。
このときに複合型の脂質代謝異常を引き起こす、クッシング症候群・糖尿病・膵炎なども考慮しながら治療するべきでした。
飼い主はその時から、うっすらと目が白くなっているように感じていましたが、トイプードルのため遺伝性の白内障という診断をしていました。

 

セカンドオピニオンにて糖尿病が診断される

セカンドオピニオンの先生のところには右目が以前に比べて白くなってきているとの主訴で来院されたようです。
問診が詳しく行われたところ、飲水量が多く体重が減ってきていることが分かりました。
多飲多尿・白内障があることから血液検査・尿検査が実施されたところ高血糖および尿糖が認められました。
生化学検査において血糖値447mg/dL、TG 360mg/dL、ALP 2685U/L、Tcho 450mg/dL、その他に異常はありませんでした。
ACTH刺激試験ではpre 3.5μg/dL、post 14.3μg/dLであり、クッシング症候群の併発は否定的でした。
さらに犬膵特異的リパーゼSpec cPL 112μg/Lから膵炎も否定的でした。
フルクトサミンの上昇(563μmol/L)から持続的な高血糖を伴っていることがわかりました。
このことから、糖尿病および、白内障も糖尿病性のものと診断されました。

 

糖尿病性白内障の治療

インスリンにて糖尿病の管理をするのはもちろんですが、白内障の治療について記載します。
混濁した水晶体をクリアにするためには外科手術以外方法はありません。そして白内障の手術に関してはいくつか問題があります。

  • 手術できる施設が限られており、人間に比べて高額
  • 術後の合併症が多く長期にわたって入院や術後管理が必要
  • 全身麻酔をかけるためリスクを伴う

飼い主にはこれらの負担を十分説明する必要があります。また、本症例のように糖尿病を患っている場合は全身麻酔をかけるリスクに加え血糖値のコントロールがきちんとできていることが手術適用の条件です。
外科以外の治療法としてはピレノキシンによる点眼での管理になります。

 

まとめ

白内障は年齢別に分類すると先天性、若齢性、加齢性があり、原因で分類すると代謝性、栄養性、遺伝性、外傷性があります。
トイプードルでは遺伝性の白内障の報告が多いため当初遺伝性のものということで白内障に関しては特に治療はしていませんでした。
高脂血症の治療・検査といった一部の疾患にのみ注目していると本症例のように糖尿病のような大きな疾患を見逃してしまうことがあります。
今回は白内障以外に併発疾患がありませんでしたが、セカンドオピニオンの先生に診ていただかなければより重篤な状態になっていたかもしれません。
今後は白内障をみたら原因を考え適切な問診・検査を行うことが大切だと考えています。

獣医師M

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