イヌのタマネギ中毒

イヌに食べさせてはいけない食べ物はいくつかありますが、中でも有名なものがタマネギです。タマネギは生だけでなく、加熱処理したものでも危険です。

タマネギに対する感受性はイヌによって様々なため、日々の診察の中で、飼い主さんのお話を聞くとタマネギを食べてしまったけれど大丈夫だった、などのお話を聞くこともありますが、とても深刻なケースもあるため今回ご紹介します。

症例

1歳、トイプードル、避妊メス、尿が赤いとの主訴で来院。可視粘膜蒼白、CRTの延長が認められたため、血液検査を行ったところPCV29と貧血が認められました。

普段からなんでも口にしてしまうという飼い主さんの話から、タマネギ中毒を疑いニューメチレンブルー染色を行ったところ、ハインツ小体を確認しました。
このことからタマネギ中毒によるハインツ小体性溶血性貧血と診断しました。

タマネギ中毒の機序

酸化的障害をうけた赤血球中のヘモグロビンは正常な立体構造を失い、変性産物であるハインツ小体を形成し赤血球膜に付着します。ハインツ小体が付着した赤血球は脾臓により赤血球膜の一部が脱落し、赤血球は壊れやすくなり結果的に寿命が短くなります。そのため、貧血となり、ハインツ小体性溶血性貧血を発症します。

イヌでこのように酸化的障害を起こす食べ物の代表が、タマネギ・ネギ・ニンニク・ニラなどのネギ類です。

タマネギ中毒の治療

肉じゃがの汁など、知らないうちに食事にタマネギが含まれている可能性があるため、飼い主さんによく確認し、与えているようであればすぐにやめてもらいましょう。

貧血の度合いが軽度または症状がない場合は治療がいらないこともありますが、今回は血尿があったため体からの排泄を促す目的で輸液を行いました。さらに抗酸化剤としてビタミンE、ビタミンCを経口投与し、入院してもらいました。
1週間の入院中、3日に1度CBCを行いPCVの上昇を確認したのち退院としました。
退院後もCBCを再度確認しましたが、血尿もなく現在経過は良好です。

まとめ

イヌが生のタマネギをそのまま食べることはあまりありませんが、肉じゃが、お味噌汁などタマネギの成分が入っている食べ物はたくさんあります。飼い主さんはそれを知らないうちにイヌに与えている可能性があるため、よく稟告を聞く必要があります。

タマネギに対する感受性はイヌによって異なり、たくさん食べても問題ないイヌもいれば少量で重篤な症状がでるケースもあります。

タマネギ中毒は貧血の度合いによっては輸血が必要になること、また死に至ることもあるので注意が必要です。

獣医師M

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