【ヒト医療トピックス】糖尿病コントロール目標の変遷

医療は薬物や医療機器の進歩により発展してきた反面、それを使う医療技術については、医師の経験(さじ加減)により積み上げられてきた時代もありました。現代では、積み上げられてきた医師の経験をエビデンスとして確立する為に多くの拡大臨床試験が実施され、そのエビデンスをもとに多くの医師が治療を推進しています。

強化インスリン療法のエビデンスの確立

糖尿病の領域では、1993年に発行されたDCCTにて1型糖尿病の患者さんの血糖値を健常人に近づけることで、その後の合併症の発症が抑制されることが初めて証明されました。その時に用いられた平均血糖「HbA1c」が、現在においても血糖コントロールのゴールデンスタンダードとなっています。その後、日本人の2型糖尿病患者を対象とした「熊本スタディ」で、HbA1cが6.9%未満であれば合併症の発症リスクが減少する可能性があることも証明されました。

低血糖のリスク

血糖コントロールの重要性は証明されましたが、特にインスリン治療において厳しいコントロールを追及すると重篤な低血糖が発生するリスクがあります。厳格に血糖値をコントロールすることで心血管疾患の発症を阻止できることを証明するためにデザインされたACCORDでは、コントロール群において試験中に死亡率が増加し、わずか3年で試験が中止となりました。厳格な血糖コントロールはリスクの高い血糖変動を誘発し、発生した低血糖において致死的な心血管疾患が発症したと推測されました。

個々の病態や年齢に応じたコントロール設定

特に平均血糖だけをコントロールマーカーとして追っていくと、重篤な低血糖を見逃す危険があります。病態に応じて、適切なタイミングで血糖値を測定することが求められます。また、低血糖は致死的な低血糖だけでなく認知症を誘発するなどQOLの低下を招くことが証明されました。その後、欧米において、個々の症例で病態に応じ適切なコントロール目標を定めることがガイドライン化され、日本においても合併症の発症を抑制できるコントロール目標HbA1c 7.0%を基準として、個々人の病態や年齢を考慮したコントロール目標を定める「熊本宣言2013」が日本糖尿病学会から発行されました。

まとめ

動物の糖尿病においても同じです。特に人間よりも寿命が短い動物は、個々の病態を適切に判断して、その子に応じた穏やかな治療目標を定めることが求められます。元気で穏やかな一生を送れますように。

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