尿蛋白の確認、きちんとしていますか?

病院での検査といえば、血液検査を連想する方が最も多いのかもしれません。では、血液検査で腎臓病を疑ったときに尿検査をきちんと実践しているでしょうか。尿検査で尿蛋白を測ることにより腎臓の状態を把握することができ、適切な治療法を選択できます。予後にも関わってくるため、血液検査でモニターするだけでなく定期的に尿検査、特に尿蛋白の測定をすることが大切です。

尿蛋白の測定

どのメーカーの試験紙でも基本的には潜血反応・pH・尿蛋白・ビリルビン・ブドウ糖・ケトン体などが測定できます。まずは院内での尿検査試験紙で蛋白尿を測定してみましょう。原理としては、尿試験紙は低いpHに緩衝されており、蛋白質は溶液のpHによって荷電します。その荷電によりpH指示薬の色調が変化し、どのくらい尿蛋白がでているか把握できます。

夏場や、夜間における尿の濃縮の問題をキャンセルするためには、UPC(尿蛋白・クレアチニン比)の測定が推奨されます。定量的に判断したい場合は、外注検査でのUPC測定が有用です。尿比重の濃度の影響を受けにくいので院内検査に加えてUPCを積極的に測定することをお勧めします。最近では、犬猫専用尿分析装置を使用し簡単に院内でUPCを含めた尿検査を行えるため、導入している病院も増えています。

尿蛋白の測定の注意点

尿のpHがアルカリ側に傾いている場合は、尿蛋白が偽陽性を示すことがあります。そのためpHの確認も重要です。また、尿は少量の蛋白質とアルブミンを含んでいます。正常の尿ではこれらの含有量は少ないため通常検出されません。しかし、尿自体が濃縮している場合は蛋白質を検出してしまうことがあります。そのため、蛋白尿が±から+程の結果が出てしまうことがあるので、尿比重の結果も踏まえて解釈していきましょう。一方で、腎臓病などで薄く希釈されたような尿の場合は尿試験紙では低く出てしまう恐れがあります。尿比重が低い場合は積極的にUPCを利用しましょう。

尿蛋白の解釈

尿路感染などの腎臓以外からの蛋白尿が否定できれば、有意な蛋白尿は糸球体からの漏出と考えます。UPCは通常0.2以下が正常です。ネコでは0.2を超えてくる時点でARB製剤やACE阻害薬を検討するべきという報告があります。また、蛋白制限食を使用することも生存期間を延ばすことにつながるといわれています。

まとめ

血液検査で腎臓病と判断したら、尿検査も併せて行ってください。尿蛋白がでているかどうかを知ることで治療法が変わり、予後の把握もできます。尿の濃縮による影響を回避するために、尿比重や尿pHも測定し、総合的に判断しましょう。また、腎臓による蛋白尿と診断できたら食事療法や投薬などを開始し、UPCをモニターしていくことによって、数値の増減を追うことが可能です。

獣医師T

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