尿検査を追加検査の足がかりに

尿検査は簡便で安価に行うことができる検査でありながら、得られる情報量は非常に多いというメリットがあります。しかしながら、血液検査やX線検査、超音波検査に比べると、飼い主さまも軽視しがちです。尿検査を足がかりに追加検査を行うことで病気を診断することが可能なので、診察時には積極的に勧めたいものです。また、初診でいきなり血液検査や画像検査を行うことをためらわれる飼い主さまも、尿検査で病気の可能性が疑われれば、積極的に検査を行うことに同意してくれるようになります。

尿検査で分かること

尿検査で病気の確定診断につながることもあれば、尿検査をすることで病気を発見する糸口になることがあります。

尿検査で分かることは、主に腎・泌尿器疾患と全身性代謝性疾患に分類できます。

腎・泌尿器疾患としては、腎臓病や尿路の炎症・腫瘍などです。全身性代謝性疾患としては、糖尿病、プリン代謝異常症、門脈体循環シャント、肝不全などがあります。

臨床症状を伴う場合は、尿検査だけでなく最初から他の検査も行うことが多いと考えられます。そのため、病態が進行してからでないと臨床症状が見られないものを見つけ出し、早期に治療に入ることが、尿検査の重要な意義のひとつです。

具体的なチェック項目

臨床症状が出る前に尿検査で見つかることが多い病気としては、腎・泌尿器疾患が挙げられます。

ひとつにはストラバイトやシュウ酸カルシウムといった結晶の検出があります。尿検査を行うことで膀胱炎や尿道閉塞といった問題が起きる前に対処が可能です。抗菌薬の投与、療法食への変更、サプリメントの使用など選択肢はいくつもありますし、どれが効果を示すかを試していく時間的余裕もあります。

そして、慢性腎臓病の検出にも尿検査は非常に有用です。血液化学検査でBUNやクレアチニンが上昇してくるよりも早い段階で、尿検査によって尿タンパクの検出や比重の低下を足がかりに慢性腎臓病を発見することが可能です。早期発見して早期治療に入ることができれば、それだけ元気な状態を長くすることができます。

まとめ

飼い主さまの中には、積極的にペットに健康診断を受けさせたいと考える方がいる一方で、コストや動物にかかるストレスを心配して異常が出るまであまり検査に前向きになれない方もいます。

しかしながら、尿検査であればコストもかからないですし、家で採尿してもらえれば動物にかかるストレスも最小限で済みます。また、動物病院にとっても、尿検査で病気を疑うことができれば追加検査を勧めやすいです。このように、飼い主さまにとっても動物病院にとってもメリットの大きい尿検査を、今まで以上に積極的に実施してはいかがでしょうか。

獣医師F

 

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