糖尿病のコントロールのための併発疾患の治療の重要性

糖尿病のイヌやネコは、合併症や併発疾患を引き起こすことも多く、そのせいで糖尿病のコントロールがうまくいかなくなるケースもあります。
血糖値が思うように下がらず、うまく糖尿病がコントロールできない場合には、併発疾患の治療を考えてみる必要があるかもしれません。

糖尿病の悪化要因となる併発疾患

糖尿病は、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンが不足することで起こる病気です。
糖尿病には、膵臓からのインスリン分泌自体が低下してしまう「1型糖尿病」と、インスリンの効きが悪くなってしまう「2型糖尿病」があり、イヌの場合には1型に近い糖尿病が多いとされています。

インスリンの分泌が低下してしまうのにはいくつかの理由がありますが、膵炎によるβ細胞の破壊も、糖尿病の発症原因のひとつです。
また、慢性の炎症があるとインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が高くなり、2型糖尿病の発症や糖尿病のコントロール不良につながると言われています。

そのため、膵炎と糖尿病は非常に深い関係があり、膵炎は糖尿病の発症要因であるとともに、糖尿病のコントロール不良を起こす原因となることがあるのです。
また、糖尿病のイヌやネコでは膵炎を併発することも多いと言われています。

 

糖尿病に慢性膵炎とアトピーが併発した一例

慢性膵炎と糖尿病、さらにはアトピーを併発したイヌについて、以下のような症例報告もあります。

 

<症例:3歳9か月ビションフリーゼ>

・糖尿病に慢性膵炎が併発し(Spec cPLの上昇)、血糖コントロールがうまくいかず、体重減少が止まらない

・さらにアトピーの併発により痒みも強い

・何度か血糖曲線を作成し、インスリンによる糖尿病の治療を試みるも血糖値のコントロール不良が続く

・痒みのコントロールのためにシクロスポリンを使用したところ、血糖値のコントロールと膵炎が良化し体重が増加し始める

(シクロスポリン使用前:フルクトサミン= 548 μmol/L、Spec cPL>1000 μg/L

 シクロスポリン2か月使用後:フルクトサミン=336μmol/L、Spec cPL<30 μg/L)

 

このケースは、アトピーの痒みをコントロールするために使ったシクロスポリンが慢性膵炎を改善し、結果糖尿病の血糖コントロールも良化したという例です。
膵炎による炎症の軽減がインスリン抵抗性を改善したものと考えられますが、アトピーの痒みによるストレスの低下も血糖コントロールの良化につながった可能性があります。

 

まとめ

糖尿病はさまざまな合併症を起こします。また、他の病気が併発することで悪化してしまうこともあります。
特に、今回のように炎症性疾患や痒みなどのストレス疾患があると、インスリン抵抗性が高くなり、糖尿病のコントロールがうまくいかなくなるケースもあるのです。

 

したがって、血糖コントロールがうまくいかない場合には、インスリン抵抗性の起こる病気がないかを考え、糖尿病だけでなく併発疾患の治療をしっかり行うことが重要になるでしょう。

 

獣医師K

 

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