【レクチャーシリーズ:飼い主への説明ポイント】ハリネズミの飼い方_流行や写真映えだけで飼うのは危険

昨年から、コロナ禍においてペットを飼い始める人が増えていると話題になっています。それに伴い飼育放棄に関する話も後を絶たず、安易に動物を飼い始めることのないよう、情報提供の必要性を感じています。本シリーズは【飼い主向けレクチャーシリーズ】と題して、新たに動物を迎える「ペット初心者」の飼い主さまに対して、獣医療従事者がどのような情報提供を実施すればよいのか、という観点で執筆していきます。


近年、ハリネズミをペットとして迎える方が増えてきました。実際にハリネズミを飼っている方がSNS等で写真映えする可愛い画像を中心に発信し、それを目にする人にとっては「ハリネズミの可愛いところ」ばかりが印象付けられ、ハリネズミの飼育に関する知識が十分でない状態で気軽に迎えてしまうケースが多いように感じます。今回は、ハリネズミをペットとして迎えたいとお考えの方に、ハリネズミが病気になりにくい基本的な飼育環境と注意点及びかかりやすい病気や予防法についてご説明すべき点を解説します。

ハリネズミの飼育環境と注意点

ペットショップにいるハリネズミはそのほとんどが「ヨツユビハリネズミ」です。このハリネズミは中央アフリカ西側のサバンナ地帯に生息しているため、温度管理が必要になってきます。24~28度の温度を維持するのが理想です。17度以下になると休眠状態になるので、冬はそうならないように注意が必要になります。

フードに関しては、専用のフードが流通しているので、栄養の過不足による疾患はほとんど見られません。むしろ与えすぎによる肥満個体が増えているので、オスなら体重400~500g、メスなら300~400gを基準に、適正な体重を維持できる量を夕方に1回与えるということが大切です。また、かなり臆病な動物なので、過度なコミュニケーションは避け、日中は隠れることができる場所を作ってあげると安心して過ごせるでしょう。

ハリネズミのかかりやすい病気と予防法

ハリネズミがかかりやすい病気として、次の3つが挙げられます。

まず「カイセン症」です。ある病院では初めて来院したハリネズミの70%でカイセン症がみられたとの報告があります。予防に関しては、繁殖業者への啓蒙と蔓延の防止が理想ではありますが、現状では難しいようです。針が抜ける、異常な量の落屑や、痒がっている症状を確認したら、すぐに受診するよう伝えましょう。

2つ目は「歯周病」です。フードをふやかして与えていることや、専用のフードの形状が小さいことから、咀嚼に支障をきたすことはなく、気付かれずに過ごしている場合がほとんどです。イヌやネコ以上に、歯磨きなどのデンタルケアは困難であるため、定期的に動物病院での口腔内検査が大切であることを説明し、早期発見に努めましょう。

最後は「腫瘍性疾患」です。ハリネズミは、他の動物種と比較しても腫瘍性疾患の発生率が高いとの報告があります。腫瘍性疾患の病気の予防に関してはまだまだわかっていないことも多く、困難です。

手遅れになる前に自宅で早期発見する方法としては、定期的に体重を測定することが挙げられます。体重の10%程度が短期間で減少する場合は、異常の可能性があるので注意が必要です。また、触ろうとしても丸まってしまう個体が多いので、定期的に動物病院で健康診断をしてもらうように伝えましょう。

ハリネズミでも、リンパ腫、扁平上皮癌(特に口腔内で多い)、乳腺癌、子宮腺癌、骨肉腫などいろいろな腫瘍が報告されているので、イヌやネコと同じように血液検査、X線検査やエコー検査などによる精査が必須です。

まとめ

かわいいペットを迎える上で、その飼育の大変さや病気に関する知識などマイナス面まで受け入れて決断する方は少ないのではないでしょうか。ハリネズミを、なりやすい病気や正しい飼育方法を知らないでお迎えすると、治るはずの病気や、予防できる病気で命を落とすことになりかねません。健康で長生きしてもらうためにも、正しい知識をお伝えし、定期的に動物病院での健診を受けていただくことをおすすめしましょう。

獣医師K