インコをはじめとした鳥類の糖尿病の治療

血液中のグルコースのコントロールは、膵臓のα細胞から分泌されるグルカゴンとβ細胞から分泌されるインスリンの活性のバランスによって行われています。哺乳類はα細胞が20%、β細胞が70%であり、インスリンが血糖調整ホルモンとして優位に機能しているのです。それに対して穀食鳥では、α細胞が50%、β細胞が37%となっており、グルカゴンが血糖調整ホルモンとして優位に機能していると考えられています。しかし、オウムにおいてインスリン分泌能が低下したインスリン依存性の糖尿病が報告されていることから、必ずしもグルカゴンが優位に血糖調整をしているとは限らず、インコとオウムの糖尿病の病態生理についてはまだまだ不明な点が多いようです。

鳥類の糖尿病の症状と診断

鳥類の糖尿病の症状は哺乳類と類似しており、多飲多尿、食欲増進、体重減少が見られます。診断はこれらの症状に加え、ヒト用やイヌやネコで使用される尿試験紙で尿糖の確認をし、血糖値が600mg/dL以上の場合、糖尿病と診断されます。いろいろな鳥種の糖尿病の報告がありますが、臨床の現場で遭遇する機会の多い鳥種としては、セキセイインコ、オカメインコ、マメルリハなどが挙げられます。また、イヌやネコでも同様ですが、肥満が背景にある個体では糖尿病が見られるケースが多いようです。

鳥類の糖尿病の治療

糖尿病の治療を行う上で必要なのが、血糖値のモニタリングです。日本の飼鳥で一番多いセキセイインコを例にすると、30g前後の体重しかない鳥から毎回採血をすることは現実的ではありません。また、グルコースモニタリングシステムであるフリースタイルリブレも、センサーデバイスの形状が大きすぎて鳥の体格を考えると装着は困難です。さらに、鳥の糖尿病では600mg/dLを超える血糖値をモニタリングする必要がありますが、測定範囲が20~500mg/dLまでしか計測できないことを考えると、その使用は限定的となります。したがって、臨床の現場では定期的な来院時の血糖値の測定や尿糖の確認、食欲や多飲多尿の有無、体重の増減などを見ながら、良好な経過を辿っているかをモニタリング指標としています。

治療に関しては、前述にあるようなインスリン依存性の糖尿病が報告されていますが、次の3つの理由でインスリンによる治療は不可能であると考えられます。

  1. 30g前後の小型の鳥に合ったインスリンを調剤し直すのが困難であること。
  2. 血糖値のモニタリング方法が確立していない現状では、インスリンを適正量投与することができないこと。
  3. 飼い主さまに安全に鳥を保定し、毎日注射してもらうことは現実的ではないこと。

これらのことから、インスリンの投与は一部の症例を除いては現在のところ行われていません。一般的には鳥類は、グルカゴン優位の血糖値のコントロールのため、インスリンによる血糖値のコントロールの有用性に関して疑問が残るところです。それに対して、明確なエビデンスはありませんが、経験的に使用されている内服薬として、グリペンクラミドやメトホルミン塩酸塩など、経口血糖降下剤があります。良好な経過を辿るケースもあれば、改善がないケースもあり、鳥類の糖尿病に対する病態生理が不明な点からも治療法の確立には至っていないというのが現状です。

まとめ

鳥類の糖尿病に関してはまだまだわかっていないことが多く、さらなる研究成果による報告が期待されます。しかし、ある程度解明されたとしても、臨床の現場で利用できる現実的な検査法や治療法が確立するためにはさらに時間が必要となる可能性があると言えるでしょう。

獣医師A

【日本獣医生命科学大学 左向教授】糖尿病の分類

【日本獣医生命科学大学 左向教授】糖尿病の症状