近年、モルモットをモチーフにしたアニメが人気を博しており、その影響からかペットとしても注目されています。体長約20〜40cm、体重は500g〜1.5kg程度と、イヌやネコと比較すると小柄ですが、甘えたり、怒ったり、鳴いたりと表現が豊かで、コミュニケーションを重ねていくうちに飼い主さまの心を満たす存在になってくれます。「モルモットはにおいがきつい」というイメージがあるかもしれませんが、実は体臭は強くありません。しかし、体の大きさに比して排泄物の量が多く、牧草とともに長時間そのままにしておくと細菌が繁殖し、悪臭を放つことにもなりかねません。また、足が長時間不衛生な状態にあると足底皮膚炎になる、あるいは尿から放たれるアンモニアが呼吸器の病気を引き起こしてしまうこともあるので注意が必要です。
今回は、間違った飼育管理による病気を未然に防ぐべく、モルモットの基本的な飼い方と、掃除の方法について飼い主さまへの説明ポイントを解説します。
基本的な飼い方
モルモットは自然界において被捕食動物であるため、ストレスには弱い動物です。それゆえ、普段の飼育環境はなるべく快適に、安心して過ごせる場所を提供してあげる必要があります。快適に過ごせる温度は20〜26度、湿度は40〜60%です。臆病な動物なので、テレビの近くや人の往来が頻繁な場所は避け、静かな場所に小動物用ケージを設置しましょう。ケージの中には足を痛めないように牧草を敷き詰めます。下に金網を敷いてあるものがありますが、骨折のリスクがあるので取り外してください。また、安心して身を隠せるハウスも必要です。かじっても大丈夫な木製のものをおすすめします。床に置くタイプの水皿はひっくり返してしまうので、側面に取り付ける給水ボトルを利用すると良いでしょう。ご飯はチモシーなどの牧草を中心に、体重の1%程度の少量のモルモット専用ペレットを与えます。ペレットを中心に与えると不正咬合などの病気になるリスクが高いため、必ず牧草をメインとした食餌内容にすることが重要です。
掃除の方法
モルモットは体の大きさに比して排泄物の量が多いため、1日に2回は掃除するのが無難です。モルモットは基本的にはトイレを覚えないので、ケージ内の至る所で排泄します。そこで、床材として使用した牧草は全部取り替えましょう。その際に、糞の大きさや形状を確認し、異常がないか健康チェックも一緒に行うのがおすすめです。また、餌皿や給水ボトルもきれいに洗ってください。モルモットは1日の大半、口の中に食べ物がある状態です。給水ボトルから水を飲む際、口の中の食べ物が逆流してしまうので、中までしっかり洗う必要があります。最後にケージ自体もきれいに拭き、新鮮な牧草を中に入れて、元のセッティングにしたら掃除は完了です。
まとめ
不正咬合や足底皮膚炎、真菌性皮膚疾患など、モルモットに多く見られる病気の大半は、間違った飼育環境が背景にあると言っても過言ではありません。「無知がゆえに病気になってしまう」のではモルモットが可愛そうですし、深い愛情を注いできた飼い主さまにとっても後悔が残ってしまいます。モルモットの生態と病気の関係性を知っている獣医師だからこそ、飼い主さまに対してモルモットの正しい飼い方の必要性を伝えることができるのです。
獣医師M