ウサギは食べ物で尿の色が変化。尿検査で見るべきポイント

一般的に、私たちが思い浮かべる正常な尿の色は「黄色」でしょう。しかし、草食動物であるウサギの場合、食餌に含まれるポルフィリンなどの色素や代謝産物の影響により、正常でも橙色、赤色、茶色などの尿をします。また、ウサギのカルシウムの排泄は主に尿中であることから、正常でも白濁した尿をするのです。今回は、通常イヌやネコを診療の中心とされている先生方へ向けて、ウサギの尿検査で見るべきポイントとして、尿試験紙による結果の解釈と、尿沈渣の顕微鏡を用いた観察方法を解説します。

尿試験紙による結果の解釈

pH

正常値は8~9です。高タンパク食の摂取や食欲不振や飢餓状態ではpHは低下します。

タンパク

陰性または、ごく少量のタンパクであれば正常です。上昇は腎機能の低下を示唆します。

グルコース

正常は陰性です。痛みや恐怖によるストレスで小~中程度の尿糖がみられることがありますが、一過性であることがほとんどです。

ケトン

正常は陰性です。食欲不振や飢餓状態が続くと陽性になります。

潜血

正常では陰性です。陽性の場合は腎盂腎炎や膀胱炎などが疑われます。メスの場合は子宮腺癌や子宮内膜過形成なども鑑別診断に挙げられます。

尿沈渣の顕微鏡を用いた観察方法

ウサギのカルシウムの排泄は主に尿中であるため、正常の状態でも炭酸カルシウム結晶が見られることがあります。そのほか、リン酸アンモニウムマグネシウムやシュウ酸カルシウムの結晶が見られることもあります。

尿の濁りが強いと遠心分離後は泥状になってしまい、鏡検しても結晶成分が視野の大半を占めるため、そのままでは観察が難しいことも多いです。そういった場合は、Sternheimer-Malbin染色や、ニューメチレンブルー染色などを用いて、目的とする細胞を観察しやすくする必要があります。

赤血球数は正常で0〜3個/hpfであり、赤血球数の上昇は尿路あるいは子宮などの生殖器からの出血を疑う所見となります。白血球の存在は細菌性膀胱炎など尿路の感染を示唆しています。また、円柱が見られる場合は腎尿細管疾患を示唆する所見だと言えます。

まとめ

ウサギの尿は、正常であっても赤色や茶色であることから、尿試験紙の色調判定では誤差が生じてしまう危険性があります。また、白濁した尿の場合は結晶成分が多すぎて尿沈渣の観察が難しく、目的とする細胞を見逃してしまう危険性もあるので注意が必要です。ウサギ専用の尿検査試験紙判定機器はないため、正確な診断を実施するためには、ある程度経験を重ねて精度を高めていく必要があるのが現状だと言えるでしょう。

獣医師T

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