シマリスは、イヌやネコのように人と一緒に暮らしてきた歴史があるわけではなく、どちらかといえば野生動物に近いペットです。また、インコやオウムのように人に慣れるペットは群れを形成する習性があるのに対し、シマリスは単独で生活しているため人に依存することも基本的にはありません。しかし、幼少期から人と共に生活していく中で信頼関係を築くことができれば、むやみに噛みつくこともなく、シマリスのほうから手に乗ってきてくれるなどなついてくれることもあります。ただ、そういった関係性を築くことができているにもかかわらず、なんの理由もなく狂暴化する時期、いわゆる「タイガー期」に突入してしまうことがあります。今回は、「タイガー期」に入って困惑した飼い主さまに対するアドバイスの一助として、突然狂暴化するシマリスの習性と、その際の接し方について解説します。
「タイガー期」は冬眠前の秋ごろに貯蔵した餌を守るための行動
シマリスは、冬眠に備えて秋頃に越冬できるだけの餌を確保する習性があります。縄張り意識も強く、単独生活しているシマリスにとって貯蔵した餌や巣に近づく動物は、自分の命を脅かす存在でしかありません。また、冬眠をしないタイワンリスやキタリスではタイガー期が見られないことから、秋頃に突然狂暴化する理由は冬眠前に貯蔵した餌を守る、ひいては自分の命を守るための攻撃行動だと考えられます。
「タイガー期」の症状と接し方
タイガー期の症状にはいくつかありますが、一般的なものとしては、声を出したり飛びかかってきたりする威嚇行動、飼い主さまの手などへの噛みつき行動が挙げられます。狂暴化してしまったら、なだめようと余計に接するのは逆効果です。最低限のお世話のみにとどめ、接触を避けるのが一番。秋に始まる攻撃性も春になると急におさまり、もとの人に慣れた状態に戻ることがほとんどです。
まとめ
これまで注いできた愛情ゆえに、突然の狂暴化は裏切られたようで飼い主さまにとってショックかもしれません。獣医師としては、飼い主さまの心情を察しつつも、シマリスの心情にも思いを寄せる必要があります。シマリスにとっても、この時期は強いストレスを感じるがゆえの攻撃であるため、好きで噛みついているわけではありません。
こういった時期がある、ということを十分に理解して飼育を始めることができるのがベストではありますが、中にはあまり知識が無い状態でシマリスを迎える方もいます。秋に向けてタイガー期の症状が出てくる可能性が高い時期となりますので、シマリスの飼い主さまと話をする機会があれば、事前に注意を促しておくとよいのではないでしょうか。
シマリスと飼い主さまが良好な関係性を維持するためにも、適度な距離を保ちつつ愛情を忘れないようアドバイスしていくことが、タイガー期にできる獣医師の役割だといえるでしょう。
獣医師G