糖尿病はインスリン分泌の低下(もしくは欠如)とインスリン抵抗性の発現によって生じ、肥満、感染症、ストレスなど様々な要因が関与しています。
糖尿病患者さんはしばしば尿路感染症や結膜炎、皮膚病、歯周病などの感染症にかかりやすいことが知られており、中でも歯周病は、ヒトの医学領域において第6番目の糖尿病合併症として注目されています。
今回は糖尿病のイヌ、ネコに対して歯周病の管理を行うことで口腔内の慢性炎症、疼痛を制御し、食欲の安定化、血糖コントロールの改善が認められたケースをご紹介します。
Case 1
・オシキャット、13歳齢、避妊雌、3 .0 kg
・食欲不振とそれに伴う血糖コントロール不良
・本学受診の2年前に糖尿病と診断されインスリン治療を開始されていました。
本学への来院は食欲不振とそれに伴う血糖コントロール不良でしたが、全身麻酔下での歯科処置により食欲が改善し、血糖コントロールの改善およびインスリン投与量の減量が可能となりました。
16週後に歯周炎が再燃しましたが、抗生剤、鎮痛剤の投与により再び血糖コントロールマーカーである糖化アルブミン(GA)が20%以下まで改善しました。
図1.血糖コントロールとインスリン投与量の変化
日本獣医生命科学大学 小田民美、左向敏紀