【いまさら聞けない!シリーズ】ウサギがかかりやすい病気「不正咬合」の原因と予防法

ウサギの歯科疾患の頻度は非常に高く、ウサギで発生する全疾患の約20%にも及ぶと報告されています。その中でも遭遇する機会の多い病気の一つが、不正咬合。ウサギの歯は、切歯も臼歯も常生歯であり、生涯にわたって伸び続けます。伸びるスピードに対して、牧草などを咀嚼して削れるスピードが均衡することでちょうどいい長さを維持しているのが正常な状態ですが、不適切な食事や飼育環境を背景に歯の噛み合わせがずれてしまう状態が、不正咬合です。今回はこの不正咬合について、その原因と予防法をお伝えしていきます。

不正咬合の原因

不正咬合の原因は、切歯と臼歯で異なります。切歯でみられる不正咬合の原因として多いのは、金属ケージをかじること。ケージから出たい時や、かまって欲しい時のサインとして金属ケージをかじることでアピールするウサギがいますが、それに対して飼い主さまが応じることで学習による行動の定着が起こり、習慣化するのです。臼歯の不正咬合の原因として多いのは、ペレットばかり与えるなどの不適切な食餌の多給。牧草を食べている場合、ウサギの臼歯の本来の咀嚼方向は前後左右がメインなのに対し、ペレットを食べた時の咀嚼方向のメインは上下方向になってしまい、徐々に臼歯が傾き不正咬合へと移行していくのです。

不正咬合の予防法

原因が異なるため、予防法も切歯と臼歯で異なります。切歯の不正咬合の予防法は、金属ケージを使用しないこと。すでに金属ケージを使用されている場合は、内側にアクリル板を挿入するなど、金属部分を噛むことができないようにするのも有効です。臼歯の不正咬合の予防法は、牧草をメインの食餌にすること。特に1番刈りのチモシーが推奨されますが、硬い部分も多く、食べない場合は2番、3番刈りの柔らかい牧草から与え始めても良いでしょう。

まとめ

原因からもわかる通り、不正咬合は自然界のウサギでは基本的には発生することのない病気、つまりはペットとして間違った飼育方法をとっているが故に発生してしまった、人工的に作られた病気です。ペレットしか与えていない、間違った飼育方法が今でも当たり前にされている飼い主さまは少なくありません。しかし、不正咬合はなってしまったが最後、完治することはほぼありません。生涯にわたって治療が必要になるかわいそうなウサギが後を絶たないのも事実です。予防が第一の病気であるからこそ、臨床の現場に従事する獣医師一人ひとりが間違った飼育方法を正し、情報を発信していく必要があるのかもしれません。

獣医師T

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