【鹿児島大学 桃井教授】血糖値の恒常性 インスリノーマは谷あり山あり2

術後に体重増加・・・

前回からインスリノーマのティアラさんを紹介しています。

 

愛されキャバリアのティアラさんはインスリノーマの2回目の手術を受けました。このブログを書いている時点で診断から2年10ヶ月くらい経過しています。

 

元気でよくがんばってくれています。でもけっこうぽっちゃりしてしきました。2回目の手術時の体重は痩せ気味の6.4kgでした。

そして現在、そこから約2年が経過して体重はなんと13.7kgです。

 

ティアラさんにいったい何があったのでしょうか?

術後の経過状況

2回目の手術と同時に、低血糖のコントロールを目的に使用していたプレドニゾロンは中止しました。リバウンドの高血糖を予測していたからです。

 

やはり術後に高血糖になりました。インスリン濃度も検出限界以下へ。ここまでは予想どおり。

 

1週間くらいで落ち着くだろうと思っていたのですが、1ヶ月たっても血糖値300台。待っても待っても血糖値が落ちてこないのです(図1)。

図1.ティアラさんの術後の血糖値とインスリン濃度
再手術により血糖値が20mg/dL台から跳ね上がりました。血中インスリン濃度も一気に検出限界以下になっています。そのうち血糖値も下がってくるだろうと思ったのですが、なかなか低下しなかったです。

 

グリコアルブミンも30%超え(正常は11%くらい)。
食欲はありましたが、食べても痩せていき、術後2ヶ月目には5.3kgに減少(表1)。

表1.再手術からの日数、体重、血糖値の変化

もともと痩せ気味でしたが、体重がどんどん落ちていきます。しっかり食べてくれるのに・・・グリコアルブミンも高いです。糖尿病です。

立派な痩せキャバリアです。これが糖尿病の細胞飢餓ってやつですね。
それにしても高血糖がこんなに持続するとは。予想外でした。

インスリン療法を開始するか否か・・・

そのころには超音波で肝臓に転移巣らしきものも見つかってしまいました(図2)。
いずれ低血糖傾向に向かうことが予想されましたが、その時期がわからない。はたしてインスリン療法を開始すべきかどうか?

図2.超音波画像
以前から肝臓の転移は気にしていて腫瘍を探していましが、とうとう見つかってしまいました。この後も数や大きさが少しずつ増えていきました

 

ここで優柔不断な獣医(筆者)は再び悩みます。
悩んで悩んで、インスリン療法もやむを得ない、と決断したとたん、血糖値は反転して低下傾向になりました。

 

グリコアルブミンも低下開始。それと同時に今度は体重も一点、増加を開始します。結局インスリンは打たずに終了です。優柔不断の勝利。

いや、こんなに痩せる前にインスリンをはじめた方がよかったかもですね。

ガリガリだったティアラさんの体重もそこからゆっくり戻していって半年後には5.95kg。いいぞティアラさん。

 

しかしさらにその1ヶ月後には一気に7.9kgまで増加。この時の血糖値はちょうど100くらいです。その後、また低血糖気味になっていましたが、プレドニゾロンも使わずに無治療で1年くらいが経過しました。

 

体重増加

投薬もなかったのでしばらく来院もなかったのですが、そんなある日、街のパン屋でばったり飼い主さまとお会いしました。

飼い主さまは何か言いにくいことがありそうな感じでぽっちゃりしちゃって・・・とおっしゃっていました。

 

なんのことかわからなかったのですが、後日来院していただきひと目でわかりました。ティアラさんの体重はなんと11.7kg。小さめのキャバリアにしては立派な体重です。

 

さらにその1ヶ月後には13.7kg。ハイペースの増加です。昔の倍の体重を超えてしまいました。

ティアラさんも重そうです。フードを減らせばいいじゃないか、そう思う先生も多いかもしれません。

 

でも実際にはそう簡単ではありません。飼い主さまには、以前から頻回の食事、しかも低血糖時の炭水化物摂取を指示していました。

このころには運動時や空腹時に低血糖症状がでていたので、1日6回の食事にしてくださっていました(今でも1日6回です)。

 

ちょっと油断していました。これほど太るとは!

1回の食事の量を少し減らしていただいていますが、低血糖発作も再発してきたので現在はプレドニゾロンも再開しています。あぁ、痩せにくい。

それでも太り過ぎないように飼い主さまは食事の量をしっかり管理してくださっています。

 

現在、ティアラさんは元気に来院してくれています。
家庭で血糖値を測定してもらっていますが、プレドニゾロン開始後、低血糖症状はないものの血糖値は概ね30~40台です。症状がでるかでないか、ぎりぎりのラインと思われます。

プレドニゾロンでのコントロールもそろそろ限界だと思えてきたので、ジアゾキシドの投与を行おうと思っています。

図3.最近のティアラさん
診察が終わり待合室で油断していたところを撮りました。なんか用?という感じです。
写真を撮りにきたんですよ。

現在ぽっちゃり系で13.7kgです。一番痩せていたときの倍以上あります。

 

関連ページ

血糖値の恒常性 インスリノーマは谷あり山あり1