腎臓病のネコにテルミサルタンを使用した1例

※2020年6月現在、国内でのセミントラの供給が停止されているようです。最新の製品の供給状況については販売会社へご確認ください。

テルミサルタン(セミントラ)はネコの腎臓病治療薬の1つですが、液体の薬のため飲みやすいという声が多くあります。腎臓病の治療薬はいろいろありますが、特に蛋白尿が出ている場合は蛋白尿を抑えることで腎臓病の進行を抑えることが期待できます。

腎臓病と診断したネコの1例

12歳齢、去勢雄、3.2㎏(BCS2/5)、多飲多尿を主訴に半年前に来院し血液検査を行いました。
BUN61mg/dL、Cre4.1mg/dL、Ca13.2mg/dL、P7.0mg/dL(富士ドライケム)の数値から腎臓病と診断し、尿検査を行ったところ、蛋白尿が出ていました。院内でのペーパー試験では2+。そのため、外注検査とした結果、UPC0.4でした。
腎マーカー検査SDMAでは、慢性腎臓病IRISステージ3と診断。画像検査では左腎の萎縮が認められ、収縮期血圧は156mmHgでした。

治療方針

慢性腎臓病IRISステージ3、蛋白尿が出ていることから、蛋白漏出抑制のためにテルミサルタンを使用。また、食事も腎臓病食に変更し、吸着剤としてイパキチンを使用しています。テルミサルタンを使用してから2ヵ月後の尿検査では蛋白尿はでておらず、半年後の現在も蛋白尿が出ない状態を維持しています。今後、血液検査は3ヵ月に1度の実施、尿検査は1ヵ月後に1度を提案しましたが、費用の関係で血液検査は6ヵ月後に行う予定です。

考察

老廃物を排除する目的で最近話題になっているアゾディルの使用をしていましたが、カプセルを飲ませるのが困難だったようで使用を中止しました。中身を出した状態だとアゾディルの菌が腸に届きにくいため脂肪分が多いオヤツに混ぜて与える方法もあるようですが、本症例のネコには難しかったようです。
テルミサルタンに関しては、液体のお薬のためシリンジから口に直接飲ませることができたようです。イパキチンに関しては、粉状のため水に溶いてシリンジで与えることができます。毎日のことなので飼い主さんの与えやすさは重要だと考えます。

まとめ

ネコの慢性腎臓病治療薬はいくつかありますが、その中でも蛋白尿の抑制をすることは腎臓病の進行を抑える上で重要です。今回、テルミサルタンを使用して蛋白尿の抑制に成功しました。ACE阻害薬であるフォルテコールを与えることも1つですが、飼い主さんの投薬のしやすさも考慮すると今回はセミントラ(テルミサルタン)が有効でした。基本的にはネコの薬ですが、イヌの蛋白尿がでている腎臓病の場合にも使用できると報告されているため、積極的に使用することで進行を抑えることが期待できます。

獣医師B

ネコの慢性腎臓病に使用する3つの内服薬の整理と比較

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