ネコの口腔内事情を知ろう~歯磨きって大事!~

3歳以上の成犬のおよそ8割以上は歯周病といわれていますが、ネコでも口腔内疾患は多いです。日常の診療でよく遭遇するのが口内炎。ネコの場合、歯磨きをきちんと実施できている飼い主さまが少ないため、歯の様子をあまり観察することが少なく、口内炎が原因で食欲が減退し来院するケースが多いです。鎮痛剤で経過観察することもありますが、中年期から口内炎が発生することが多いため、腎臓病に注意しながら治療を進める必要があります。

ネコの口内炎

ネコの口腔内疾患を罹患率が高い順に並べると、歯肉炎、歯石付着、歯の欠損、歯周炎、口内炎、破折と続きます。口内炎は10%程度の罹患率ですが、食欲低下や口を気にする仕草など飼い主さまが異常に気付き来院されることが多いので、獣医師としては割と遭遇することが多いでしょう。品種や雌雄差についてはさまざまな報告がありますが、確立されたものは今のところありません。

口内炎と歯周病の関係

ネコの口内炎は歯周病と併発しているケースが多いですが、歯石の付着や歯周病の度合いに相関性があるかどうかは議論が分かれています。実際に、抗菌薬の使用や抜歯を含めた歯周病処置を行うことで、口内炎が治癒あるいは症状の軽減が認められることはよくあります。一方で、ほとんど歯垢も歯石も付着していないのにもかかわらず口内炎が発症することもあるため、いまだにわかってないことが多いのも現状です。

口内炎の治療法

原因がよくわかっていないため、さまざまな治療法が存在します。口内炎が比較的軽度の場合、まずは歯垢・歯石除去による口腔内の洗浄を実施します。口腔内の処置で一番効果的といわれているのは全顎抜歯です。吸収病巣の併発や歯と歯槽骨が骨性癒着している場合は抜歯しづらいですが、根元が残痕しないように注意します。

対症療法になりますが内科療法としては、抗菌薬、抗ウイルス薬、インターフェロン、非ステロイド系消炎鎮痛剤、ステロイド、オピオイド、その他免疫抑剤などが一般的です。痛みを取る効果が強いのは、非ステロイド系消炎鎮痛剤ですが、口内炎が発症する年齢では腎臓が弱っていることも多いので、尿検査や血液検査などで腎臓のチェックは十分に行ったうえで使用していきます。

まとめ

日常の診察でよく遭遇するネコの口内炎。治療方法は多くありますが、原因があまり解明されていないため、うまくコントロールできないことや飼い主さまの希望やネコの状態で麻酔がかけられず対症療法を長きにわたって行うこともあります。口内炎と歯垢・歯石との関連は、はっきりとはわかっていませんが、少なからず歯周病処置で良化するケースがあるので口腔内をきれいに保つことは大切なことです。ネコでは歯磨きが難しいことも多いので、液体歯磨きなどを使用するのも効果的です。なるべく若いうちから、獣医師がネコの飼い主さまに対して積極的に歯磨きの指導を行う必要があります。

獣医師E

【ヒト医療トピックス】歯周病がもたらすもの

【日本獣医生命科学大学】糖尿病管理~歯周病を考える~