SDMAは主に、ネコにおける慢性腎臓病（CKD）の早期発見に活用されるマーカーですが、使い道はこれだけではありません。そこで今回は、SDMA活用法についてご紹介します。
一般的なSDMAの活用法
腎機能の評価は、SDMA以外にもクレアチニン・BUN・リン・尿比重によって行われます。ただ、クレアチニンは腎機能が約75％喪失するまでは上昇しません。一方、SDMAは腎機能が40％喪失した時点で上昇がはじまるため、CKDの早期発見に有用です。
さらに、クレアチニンは老化や痩せて筋肉量が減少したネコにおいて低下します。一方SDMAは筋肉量の影響を受けないため、腎機能を特異的に反映するとされています。
慢性腎臓病（CKD）の早期発見以外のSDMA活用法
SDMAはCKDの早期発見に用いられると認識されていますが、二次性の腎障害も検出できることから、腎障害を併発するような慢性腎臓病以外の疾患でも役立ちます。
SDMAを検査項目に加えることが有用な疾患7つ
甲状腺機能亢進症
高齢のネコでは、CKDと甲状腺機能亢進症の発症が非常に多く見られます。甲状腺機能亢進症のネコでは、疾患のピーク時に老化や痩せることで筋肉量が減少し、クレアチニンが腎外性因子の影響を受けることにより、腎機能をあまり正確に表さないと報告されています。筋肉量による影響が少ないSDMAであれば、クレアチニンよりも高い信頼性で腎機能を評価できるでしょう。
全身性高血圧症
腎不全になると高血圧を発症する可能性がありますが、反対に高血圧によって腎臓病を発症することもあります。全身性高血圧症が認められた場合にはSDMAを測定することで、初期の腎臓病または、持続的に起こっている血圧上昇からの二次的腎障害を検出するのに役立つでしょう。
心疾患
心血管系と腎臓系の働きは複雑に絡み合っており、どちらかの臓器が機能不全に陥ると、もう一方の臓器に機能不全が生じることがあります。心疾患でもスクリーニング検査にSDMAを追加すれば、腎臓系への影響を確認でき、必要に応じて早期に対処できるでしょう。
下部尿路閉塞
下部尿路閉塞では、尿が排泄できず腎臓に圧力がかかることにより、急性腎障害を発症することがあります。下部尿路閉塞におけるSDMAの測定は、緊急処置のための麻酔前評価や、利尿後の経過観察、退院後の再検査に役立ちます。また、SDMAによって、各段階におけるGFRの回復を確認することができるでしょう。
敗血症
イヌの敗血症では、急性腎障害を誘発する場合があることが報告されています。敗血症においてSDMAを測定すると、腎機能に急性の障害が生じているかどうか、また発生した障害の程度がどれくらいかを確かめるのに役立ちます。
腫瘍
腫瘍は、特に悪性腫瘍においてSDMAを測定することが非常に有用です。SDMAは、腫瘍随伴症候群による腎障害の検出と管理方法の見直しや、悪性腫瘍が腎組織に浸潤している可能性の確認、化学療法を継続する判断材料となるでしょう。
薬物毒性
薬物毒性は、薬物の誤飲による急性中毒と、疾患に対対応した薬物の定期投与による慢性中毒の2つがあります。これらにおいても、SDMAを測定すれば、腎臓の状態を把握することが可能です。また、薬物を定期投与している症例の評価にSDMAを用いれば、長期的な管理や治療の見直しに役立つでしょう。
まとめ
腎臓バイオマーカーや尿検査を行う際、健康動物にも疾患動物にも一貫してSDMAを検査に加えることで、腎機能の評価精度の向上が期待できます。SDMAをうまく活用し、より長期的な健康維持につなげていきましょう。
獣医師N
【参考文献】
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