CKDのネコでは、腎性貧血がQOLの低下に関連するといわれています。腎性貧血を把握し、改善することで、QOLの改善とCKDの進行抑制、生存期間の延長につながることが期待できるでしょう。そこで今回は、CKDのネコにおける腎性貧血とQOLの関連性と、その診察および治療について解説します。
CKDのネコの各ステージにおける腎性貧血の割合
腎性貧血は、IRISによるCKDステージ分類のうち、3以降の進行したステージで認められることが多いと報告されています。なかでも、尿毒症症状を示すCKDのネコの32%で、末期のCKDのネコの65%でPCVの低下が認められるとの報告もあるようです。
CKDのネコで腎性貧血の存在が生存期間やQOLに与える影響
腎性貧血が存在するCKDのネコでは、沈うつや運動不耐性、活動性の低下といった臨床症状が現れるため、QOLの低下と関連するといわれています。さらに、明確な根拠はないですが、重度の貧血による活動性の低下は、積極的な食事摂取や、水分摂取の低下とも関連すると考えられています。
また、血中へモグロビン濃度およびPCVがCKDのネコの生存期間と有意に関連しているとの報告があります。
しかし、腎性貧血の存在が腎機能低下を促進するかどうかは、現在まだ明確にはなっていません。そのほか、CKDのネコの生存期間と関連する因子として、年齢やクレアチニン、尿蛋白:クレアチニン比、線維芽細胞増殖因子、PCVが報告されています。
CKDのネコにおける腎性貧血の診断および治療
ネコの貧血の診断はPCVを主体にして診断することが多く、PCV20-24%は軽度、15-19%は中程度、18%は重度と判断されますが、近年ではヘモグロビン濃度を主体に診断することが推奨されています。
腎性貧血の治療は、エリスロポエチン(EPO)製剤に加えて鉄補給を行います。これは、腎性貧血の主要原因が腎臓でのEPOの産生の低下によるものですが、機能的および絶対的な鉄欠乏も、腎性貧血の発生に関与するといわれているからです。
もし、EPO製剤に反応せずPCV25%未満の場合には、ネコは機能的な鉄欠乏を起こしていたと考えられ、鉄の投与だけでは改善しません。そのようなときには、貧血を悪化させる炎症性疾患の確認や、併用薬の中止、骨髄穿刺などを検討する必要があります。
このように、腎性貧血の診断・治療には、同時に鉄代謝状態を評価していく必要があるでしょう
まとめ
CKDのネコにおいて、腎性貧血の存在が腎機能低下を促進するかどうかは、まだ明確にはなっていません。しかし、腎性貧血を改善することにより、QOLの改善と生存期間が延長することがわかっています。腎性貧血が見られた場合には、積極的に貧血治療にあたるようにしてみてください。
獣医師G
【参考文献】
宮川 優一, ネコのCKDにおける腎性貧血の重要性, 日本獣医腎泌尿器学会誌, 2018, 10 巻, 1 号, p. 23-29