日本におけるイヌとネコの寿命と死亡原因

イヌやネコの死亡時年齢や死亡原因の把握は、健康診断の設定や健康増進の対策を立てるうえでとても有用です。今回は、全国にある40の病院の協力により得られた2020年4月1日〜2021年8月31日までの死亡データを分析した、『動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析』という論文をご紹介します。

方法

40病院から協力を得て、2020年4月1日~2021年8月31日までの間に各病院が把握したイヌとネコの死亡個体全頭についてアンケートを行い、データベースが作成されました。
調査項目は、動物種・品種・年齢・性別・死亡年月日・死亡原因(疾患分類)。このデータから、イヌおよびネコの死亡原因別の頭数を集計し、コホート生命表を作成。平均寿命が算出されています。

イヌとネコの平均寿命と死亡原因

イヌ1,582頭、ネコ551頭のデータが得られ、死亡時の年齢から作成したコホート生命表を見ると、平均寿命はイヌで13.6歳であり、ネコでは12.3歳となっています。死亡原因は、イヌでは腫瘍が最も多く18.4%、次いで循環器疾患が17.4%、続いて泌尿器疾患15.2%。ネコでは、泌尿器疾患が最も多く29.4%、次いで腫瘍が20.3%、循環器疾患が11.8%と続きました。

死亡原因の性別差については、イヌでは不明・突然死は雄に多く、生殖器系の疾患は雌に多く、2つの疾患に有意差がありましたが、ネコでは全疾患で有意な差は見られませんでした。

さらに、イヌとネコそれぞれにおいて、上位となった死亡原因の2疾患の影響を除いた平均寿命を調べたところ、イヌでは腫瘍(死亡原因一位)による死亡を除去した場合の平均寿命は0.6歳延び、循環器疾患(ニ位)では0.5歳延びると推定されています。

同様に、ネコの泌尿器疾患(死亡原因一位)では1.6歳、腫瘍では1.0歳(ニ位)平均寿命が延びると推計されています。このデータをもとに優先順位をつけて疾患対策を行うことで、効率的な健康増進が可能になると考えられています。

上位7犬種における死亡原因について

日本国内で飼育頭数上位7犬種における上位の死亡原因と特徴は以下です。

ミニチュア・ダックスフンド
腫瘍・神経疾患・泌尿器疾患

チワワ
循環器疾患・泌尿器疾患・呼吸器疾患
腫瘍が6番目となっているのが特徴的

トイ・プードル
泌尿器疾患、循環器疾患、肝胆膵の疾患

柴犬
腫瘍疾患、神経疾患、泌尿器疾患、老衰犬全体では2%である老衰が14%を占めている

ヨークシャー・テリア
泌尿器疾患・循環器疾患・腫瘍

シーズー
循環器疾患・腫瘍・泌尿器疾患

ミニチュア・シュナウザー
循環器疾患・腫瘍・肝胆膵系疾患・泌尿器疾患

まとめ

このデータをもとに、イヌでは腫瘍と循環器疾患、ネコでは泌尿器疾患と腫瘍など優先順位をつけて疾患の治療や予防を行うことで、効率的な健康増進が可能になると考えられています。また、上位7犬種における死亡原因のデータから、それぞれの犬種で上位の死亡原因となっている疾患については、毎回の健康診断で必ず確認を行うことで、健康増進に繋がると考えられるでしょう。

獣医師F

【参考文献】
井上 舞.杉浦 勝明.動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命.日獣会誌.2022.75巻.p.122-133