糖尿病に対する避妊手術の有用性

イヌの避妊手術に関しては飼い主さまによっていろいろな意見がありますが、獣医学的観点で考えると、避妊手術を行った方がさまざまな疾患を予防することができます。確率的には稀ですが、避妊手術をしていないことによる黄体期糖尿病などもあるので、糖尿病と診断した場合は体の状態を見ながらの避妊手術が必要になります。

避妊手術するメリット

避妊手術をするメリットはたくさんあります。早期に行うことで乳腺腫瘍の発生や子宮蓄膿症などの疾患を防ぐことができます。また、糖尿病を罹患した際に、黄体ホルモンの影響でインスリン抵抗性があり上手く血糖コントロールを行えないことが多いため、健康で若いうちに避妊手術を行うことが理想的です。

糖尿病と黄体ホルモンの関係

性ホルモンの中には、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、それぞれが血糖値に関わりをもっています。卵胞ホルモンには、血糖値を下げる働きのあるインスリン感受性を高める作用があり、血糖値が低くなる作用があります。

それに対して黄体ホルモンは、インスリン感受性を低下させ抵抗性を上げるため、血糖値が上がりやすくなります。この黄体ホルモンが原因で糖尿病を発症することや、糖尿病の治療がうまくいかないケースがあります。

インスリン投与が必要なくなる可能性がある

糖尿病の原因はさまざまですが、イヌの場合はほとんどがインスリン依存性の糖尿病です。そのため、生涯にわたりインスリンの投与が必要になります。しかし、黄体ホルモンによる糖尿病の場合、ホルモンの影響でインスリン抵抗性が上がっている状態のため、避妊手術をすることで黄体ホルモンの産生がなくなれば血糖値は落ち着いてきます。原因が黄体ホルモンだけであれば、その後にインスリンの投与は必要なくなることがあります。他に原因や併発疾患があり、インスリンの投与が無くならない場合でも、避妊手術をすることで血糖コントロールは比較的行いやすくなります。

まとめ

ネコの糖尿病と異なり、イヌの糖尿病はインスリンから離脱できることはほとんどありません。黄体ホルモンの影響で一時的にインスリン抵抗性を示すことで発症した糖尿病であれば避妊手術でインスリンから離脱できる可能性があります。糖尿病発症後の全身麻酔は健常犬にくらべると麻酔リスクを伴うため、健康なうちに飼い主さまに避妊手術をするメリットを獣医師がきちんと説明する必要があります。

獣医師A

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