イヌの高コレステロール血症と甲状腺機能低下症との関係とは?

イヌの健康診断では総コレステロールや中性脂肪の上昇が偶発的に見つかることがあります。単なる食事性変化と思われるケースでも、持続的な脂質異常の背後に、内分泌疾患が潜んでいることもあります。特に甲状腺機能低下症では、脂質代謝の低下により高コレステロール血症が生じやすいため注意が必要です。今回は、内分泌疾患の発見につながる高脂血症の評価ポイントについて解説します。

高脂血症について

高脂血症とは、血清総コレステロールや中性脂肪が基準値を超えている状態を指します。空腹時採血での評価が基本であり、一過性の変動ではなく持続して高値が続く場合は病的要因を疑う必要があります。

一般的に総コレステロール300 mg/dL以上、中性脂肪150~200 mg/dL以上を目安として評価されます。持続的な高脂血症が認められる場合は、脂質代謝に影響を与える病的要因の存在を疑うべきです。

内分泌疾患との関連

イヌの高コレステロール血症の背景として、以下のような内分泌疾患が関与することがあります。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの低下によって基礎代謝が落ち、脂質代謝も遅延します。T4、fT4、TSH の測定が診断に有用で、混合型脂質異常がみられることもあります。

クッシング症候群

コルチゾール過剰により、脂質代謝亢進・インスリン抵抗性・過剰なVLDL産生が起こり、高脂血症を引き起こします。

糖尿病

インスリン作用低下により脂肪分解が促進され、中性脂肪が上昇しやすい状態になります。

二次疾患の発症リスク

脂質異常は胆泥症、膵炎、動脈硬化の一因になるため、肝酵素や膵特異的リパーゼと合わせた評価が推奨されます。

最近の研究では、内分泌疾患によって脂質プロファイルが特徴的に変化することが報告されており、とくに甲状腺機能低下症では、コレステロール上昇の程度が強いことが示されています。

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まとめ

脂質異常は「栄養性だから様子見でよい」と軽視されがちですが、内分泌疾患の早期サインであることも少なくありません。甲状腺機能低下症、クッシング症候群、糖尿病といった疾患は、治療開始で脂質プロファイルが改善することも多く、高脂血症を出発点とした追加検査が診断につながるケースもあります。数値の背景にある病態を丁寧に評価し、早期診断につなげることが、犬の健康寿命の維持に重要です。

【参考文献】

1.Sieber-Ruckstuhl NS, et al. Serum Lipidome Signatures of Dogs with Different Endocrinopathies Associated with Hyperlipidemia. Front Vet Sci. 2022.

2.IDEXX. 「脂質プロファイル」

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