ネコにおけるFIV/FeLVの基礎知識と、近年の感染症動向

FIV(猫免疫不全ウイルス感染症)とFeLV(猫白血病ウイルス感染症)は、感染力の強いウイルスです。特に多頭飼いの飼い主さんへの説明を怠ると、同居ネコまでもが感染の危険に晒されかねません。そこで、今回はFIV/FeLVの基礎知識と、近年の動向について解説します。

FIVとFeLVの病態と感染経路について

FIV

感染経路でもっとも多いのは血が出るほどのケンカです。
FIV感染症には、感染急性期、無症候期、いわゆるエイズ期の3つの感染期があります。

・感染急性期
感染2週以降に見られ、通常1〜2ヵ月持続します。ウイルス血症の時期で、抗体検査は陽性です。ウイルスが骨髄に達して増殖しようとしますが、同時に免疫系の防御機構が働きます。急性期の症状としては、発熱や元気消失、リンパ節の腫れ、白血球減少症、血小板減少症、貧血などで、稀に敗血症や貧血などで死亡することもあります。

・無症候期
ウイルスが排除できない場合、ウイルスが骨髄に進行します。骨髄への感染が成立した後、ウイルスは全身に広がりますが、長期間にわたって無症状であることが多いです。

・エイズ期
持続感染ネコは発症する確率が高く、感染後2年で約60%、3年半で約80%が死亡するという報告があり、感染から約3年以内には発症し死亡するといわれています。この時期には、悪性腫瘍や、血液疾患、免疫疾患、その他の感染症など、様々な病気が見られ、これらはFIV感染に関連して起こるため、FIV関連疾患と呼ばれています。

FeLV

FeLVウイルスは感染ネコの唾液・涙・糞便中に含まれ、口や鼻、傷口から感染するため、母ネコからの水平・垂直感染、感染ネコと一緒に暮らす、ケンカをするなどが感染経路となります。感染力が強く、ウイルスに接触したネコの約70%が感染するため、FeLVのネコは完全に隔離してください。

症状としては、食欲不振や体重減少、貧血、下痢、発熱、脱水、鼻水、口内炎など。発症したと思われても持ち直すケースも多く、天寿を全うする子もいます。

FIVとFeLVの検査のタイミングや結果の解釈について

すべてのネコにおいて、以下のタイミングでFIVとFeLVのウイルス検査が推奨されています。

・初めて飼う時
・最初のFeLVやFIVワクチンを接種する前
・感染している可能性のあるネコと接触した後
・なにかしら感染を疑う症状がある時

各検査のタイミング

FIV検査は、感染の可能性があるタイミングから60日以降、FeLV検査は28日以降に検査を行ないます。検査の結果が陰性でも、偽陰性の可能性もあるため、FIV検査はさらに60日経ってから、FeLV検査はさらに30日経ってからの再検査が推奨されています。

最近のFIV・FeLV感染症の動向

FIVは世界中に存在している感染症ですが、日本では19:1と圧倒的に外ネコに多い傾向で、疫学データによると屋内感染は少ないようです。FIV感染が一度成立すると、回復するネコは少なく、ほとんどが持続感染となりますが、最近は明らかな免疫不全状態を発症するものは減少傾向にあります。

FeLVも、日本では外に出るネコの集団で感染率が高いといわれていますが、感染が成立したとしても、一時的な感染で終わる場合は、新生子で0〜30%、8〜12週齢で50〜70%、成猫で80〜90%以上です。

まとめ

FIV、FeLV共に、最大の予防法は感染ネコとの接触を避けること。そして、人がウイルスを運ばないよう、手洗いなどを徹底することも大切です。また、FIV、FeLVは室温で数分〜数時間で感染性を失い、太陽光線、紫外線、ほとんどの消毒薬に反応して失活します。感染ネコがいる場合にはこまめな掃除を心がけましょう。

【参考文献】
Susan Little et al. 2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines. J Feline Med Surg. 2020 Jan.

獣医師K