ネコの糖尿病におけるIGF-1の測定意義

ネコの糖尿病を治療する上で難しいことのひとつが、インスリン抵抗性を示す症例です。
そして、そのなかでもっとも頻度が高く、注目されているのが先端肥大症による糖尿病です。
糖尿病のネコの先端肥大症の有病率は24.8%という報告もあります。
そこで本記事では、先端肥大症の診断に欠かせないIGF-1についてまとめました。

IGF-1とは

IGF-1(Insulin-like growth factor-1:インスリン様成長因子、別名ソマトメジンC)は、成長ホルモン(GH)の刺激によって肝臓などで産生される、インスリンに構造が似ているペプチドホルモンです。
IGF-1は骨や筋肉の成長を促したり、傷ついた組織の再生や新陳代謝を助けたり、筋肉を維持したりする働きがあります。

ネコの先端肥大症

ネコの先端肥大症の多くは、GHを産生・分泌する下垂体腫瘍を原因とします。
GHの過剰はIGF-1の産生・分泌を促進させ、IGF₋1の強力な同化作用で骨・軟骨・結合組織および、内臓を肥大させます。
また、IGF-1の低値も高値もインスリン抵抗性を示します。
一方、GHは脂肪細胞で中性脂肪を分解し、血中の遊離脂肪酸(FFA)を増加させます。
高濃度のFFAは肝臓や筋肉でのインスリン作用を阻害し、糖の取り込みを妨ぎます。
加えてインスリンシグナル伝達を阻害する作用もあり、こちらもインスリン抵抗性を示します。

IGF-1の測定

GHは下垂体からパルス状に分泌されるため、体内での変動が大きく、採血のタイミングによって値が大きく変動します。そのためGHにくらべ、日内変動が少ない、安定的なIGF-1がGH分泌の指標として測定されます。

国内では、以下2社で測定可能です。
1.富士フイルムVETシステムズ
血清0.5ml 冷蔵保存 ~5日で報告 ELICA法 参考基準範囲138~673 ng/mL

2.どうぶつ検査センター
血清・EDTA血漿0.5ml 冷蔵保存 3~4日で報告 ELICA法 参考基準値~795 ng/mL未満

IGF-1値の解釈

英国での研究では、糖尿病のネコ(n=1,221)の26.1%でIGF-1 の高値(>1,000 ng/mL)を示しました。
このうち、画像検査が可能であった63頭中60頭(約95%)が、先端肥大症と確定診断されています。
つまり陽性的中率は95%です。

また、IGF-1<1,000ng/mlというカットオフ値の陰性的中率は91%で、唯一の陽性例は986 ng/mLであり、カットオフ値にかなり近い値でした。

先端肥大症の症状で統計的に有意差があったのは、顔の幅広化だけでした。
事前に先端肥大症と強く疑っていたのは24%で、外見から先端肥大症を予測することが難しいことを示しています。

IGF-1測定の意義

糖尿病のネコで、血糖値コントロールが難しい要因となる先端肥大症を診断することは重要です。
しかし先端肥大症は外見・症状からの診断は難しいため、IGF-1の測定は精度が高く有用です。
先端肥大症のネコに、下垂体摘出、放射線治療、カベルゴリンで治療することは、糖尿病の寛解を導き、QOLが向上や、余命が延びることが期待できるでしょう。
糖尿病のネコに対し、早い時期にスクリーニングとしてIGF-1測定してみてはいかがでしょうか。

獣医師K

【参考情報】
1.DG O’Neill et al. “Epidemiology of Diabetes Mellitus among 193,435 Cats Attending Primary-Care Veterinary Practices in England”, J Vet Intern Med, 30, 964–72, 2016

2.Niessen, Stijn J M et al. “Studying Cat (Felis catus) Diabetes: Beware of the Acromegalic Imposter.” PloS one vol. 10,5 e0127794. 29 May. 2015, doi:10.1371/journal.pone.0127794

3.富士フイルムVETシステムズ HP

4.どうぶつ検査センター HP

5.Epidemiology / Health Services Research| March 13 2012
The Association Between IGF-I and Insulin Resistance: A general population study in Danish adults

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