ネコは3頭に1頭、イヌは10頭に1頭が腎臓病に罹患すると言われています。
イヌは、フィラリア検査や狂犬病のワクチン接種などがあるため動物病院への来院頻度はネコに比べて高くなります。フィラリア検査時に抜いた血液で、健康診断を兼ねて血液検査を行うこともできます。
ネコは、腎臓が悪くなり症状が出るころには腎臓のおよそ75%が壊れているため、どうしても発見が遅くなってしまいます。もちろんまめにネコの診察をすることが好ましいですが、難しい場合、尿検査だけでも行うと腎臓病の発見につながると考えられます。穿刺尿が新鮮で好ましいと思いますが、まずは自宅での自然排尿の尿を持参してもらい、尿一般検査やUPC(尿たんぱく定性クレアチニン補正)測定、尿比重測定、尿沈渣の確認などを行い、その結果により、詳しい検査に進むことができれば、腎臓病の早期発見につながると考えられます。(イヌネコ専用の尿化学分析装置はアークレイ(株)からthinka RT-4010が発売されております。)
尿採取の種類
採尿にはさまざまな方法があります。自然排尿、圧迫排尿、膀胱穿刺、カテーテルによる採尿などが挙げられます。
理想的な採尿方法は膀胱穿刺です。無菌的に採尿できるので、膀胱炎などで菌の培養などを行いたいときにも有効です。
手軽さで考えると、自然排尿です。飼い主さんが家で取れるようであれば自然排尿による尿検査が最もはじめやすいでしょう。
それぞれのデメリット
膀胱穿刺による採尿は無菌的で1番尿検査に向いていると思われますが、動物が暴れてしまう場合は危険を伴うため実施が難しくなります。また、採取後に軽い血尿がみられることがあります。
自然排尿は、尿が汚染される可能性が高いため細菌やpHなどをメインに見る場合は不適です。しかし、尿蛋白や尿比重を見る場合は選択しても良いかと思われます。
圧迫排尿は、尿が前立腺や上部尿路に逆流することがあること、慢性膀胱炎の場合は圧迫排尿により膀胱破裂のリスクがあることを注意しなければなりません。また皮膚に触れるため自然排尿の場合と同様に細菌培養には不向きでおすすめできません。
自宅での自然排尿の採取
ネコはイヌと異なり、お散歩で尿を取ることができないのでトイレでの採取になります。ネコ砂を使用している飼い主さんが多いですが、ネコ砂の場合は尿が吸収されてしまうので尿検査には向きません。そのため、ネコ砂を排除した状態で尿をさせるか、サランラップなどを上に置いて尿が砂に吸収されない状態で採取するのも1つの方法です。あとは、砂の代わりに手芸用のビーズを使用することで吸収されることなく尿を採取できます。
まとめ
採尿の方法はいろいろありますが、まずは飼い主さんに自宅でとれた自然排尿を持参してもらい、尿検査を行うと良いと思われます。検査の結果で比重が低かったり、蛋白が出ていたりする場合は、動物の協力が得られるのであれば穿刺尿で再度確認したり、血液検査や画像検査に進むことで早期発見につながります。
獣医師C
会員ページにて、獣医師向けの尿検査記事や、飼い主さん向けの尿検査説明資材をアップしています!
ぜひご覧ください!!
会員ページ